糖尿病は、初期の段階では自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行しているケースが多い病気です。
糖尿病を放置すると、失明や腎不全、脳心血管病などの重大な合併症を招く可能性があります。
糖尿病による合併症は、早期発見と早期対応でリスク低減につながるため、正しいチェックをするのが重要です。
ここでは、糖尿病の基本的な検査とセルフチェックのポイントについて解説します。
この記事で分かること
- 糖尿病は血糖値が慢性的に高くなる病気である
- 早期発見と早期対応が糖尿病の合併症リスクにつながる
- 主な糖尿病の検査方法と特徴
- 糖尿病チェックを意識すべき人の特徴
- 自宅でできる糖尿病のセルフチェックポイント
糖尿病の基礎知識やチェックの重要性、自宅でできるセルフチェックのポイントなども紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
糖尿病は血糖値が慢性的に高くなる病気で原因や発症の仕組みにより分類される
糖尿病とは、血糖値が慢性的に高くなる病気のことです。
通常、血糖値は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって調整されています。
しかし、糖尿病ではこのインスリンの分泌や働きに異常が起こり、血糖値がうまくコントロールできなくなります。
糖尿病は原因や発症の仕組みによって、以下の3種類に分類されます。
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- 1型糖尿病
- 2型糖尿病
- 妊娠糖尿病
1型糖尿病と2型糖尿病の違いは、以下の通りです。
特徴 | 1型糖尿病 | 2型糖尿病 |
---|---|---|
発症年齢 | 小児期から若年者 | 中高年に多い |
症状 | 喉の渇きや多飲、多尿などの症状が急激に現れて、糖尿病になるケースが多い | 初期症状がほとんどなく、気づかないうちに進行するケースがある |
体型 | やせ型の人が多い | 肥満の人が多いが、やせ型の人もいる |
原因 | 膵臓でインスリンを作るβ細胞が壊れてインスリンの分泌が低下するため、血糖値が高くなる | 乱れた生活習慣や遺伝的な影響により、インスリンの作用低下やインスリン抵抗性を引き起こして血糖値が高くなる |
治療方法 | インスリン注射を使って行う | 食事療法や運動療法を行う 場合によっては、薬物療法も追加する |
妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見または発症する耐糖能異常で、妊娠によるホルモンバランスの変化が原因で発症します。
妊娠糖尿病は胎児や母体に悪影響を及ぼす可能性があるため、早期発見と適切な管理が重要となります。
一般的に出産後は正常に戻るケースが多いですが、将来的に2型糖尿病へ移行するリスクが高いため、定期的な経過観察が大切です。
糖尿病は進行すると、以下のようなさまざまな合併症を招くリスクを高めます。
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- 糖尿病性神経障害
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性網膜症
- 心筋梗塞や狭心症
- 脳卒中
- 閉塞性動脈硬化症
糖尿病による合併症は、目や腎臓、心臓など全身に及ぶ可能性があります。
しかし、このような合併症は早期に発見して適切な血糖コントロールを行えば、予防が可能です。
そのため、以下のような糖尿病の自覚症状に気づいたら、早急に医療機関に受診してください。
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- 喉の渇き
- 多飲
- 多尿
- 体重減少
- 疲労感や倦怠感
- 空腹時のイライラ感
- 視力の低下
- 陰部のかゆみ
- 手足のしびれ
ただし、初期段階では自覚症状がほとんどない場合もあるため、定期的な健康診断やセルフチェックが大切です。
糖尿病チェックによる早期発見が合併症のリスク低減につながる
定期的な糖尿病チェックにより早期発見や早期対応ができると、合併症のリスク低減につながります。
糖尿病は、初期段階では自覚症状がほとんどないまま進行する病気です。
気づかないうちに血糖値の高い状態が続いて、毛細血管や動脈にダメージが加わり、気づいたときにはすでに合併症が進んでいるケースも少なくありません。
糖尿病による合併症は、以下のような深刻な症状を引き起こします。
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- 糖尿病性網膜症:視力の低下や失明
- 糖尿病性腎症:尿蛋白や人工透析のリスク
- 糖尿病性神経障害:手足のしびれや足の感覚低下
- 脳梗塞や心筋梗塞:突然死につながるリスク
合併症による症状が現れてからの対処では手遅れになる場合もあるため、定期的な糖尿病チェックによる早期発見と早期対応が非常に重要です。
糖尿病の検査は血糖値やHbA1cを組み合わせて行われる
糖尿病の診断や状態の把握には、血糖値とHbA1cを組み合わせた検査が基本となります。
血糖値はその時点での数値、HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖値を反映するため、両方の数値の測定により正確な評価が可能になります。
主な糖尿病の検査方法は、以下の通りです。
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- 空腹時血糖検査:10時間以上食事を取らない状態で測定した血糖値
- HbA1c検査:過去1~2か月の平均血糖値を知る指標
- 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT):ブドウ糖を摂取後の血糖変化を見る検査
- 随時血糖値測定:任意のタイミングで測定し目安とする
上記のような検査で、血糖値やHbA1cが基準値より高い場合に糖尿病と診断されます。
糖尿病の診断にあたっては、以下の3つのケースが挙げられます。
-
- 糖尿病型を2回確認する
- 糖尿病型を1回確認するかつ、慢性高血糖症状の存在を認める
- 過去に糖尿病と診断された記録がある
血液検査にて以下に当てはまると、糖尿病型と診断されます。
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- 空腹時の血糖値が126mg/dL以上
- HbA1cが6.5%以上
- ブドウ糖負荷試験において2時間後の血糖値が200mg/dL以上
- 随時血糖値が200mg/dL以上
上記の糖尿病型が別日に2回確認された場合に、糖尿病と診断されます。
ただし、2回のうち1回は必ず血糖値での糖尿病型を確認しなければなりません。
糖尿病チェックを意識すべき人の特徴を理解して早期検査や予防につなげよう
糖尿病は誰でも発症する可能性のある生活習慣病ですが、特に発症するリスクの高い人には共通の特徴があります。
このような特徴を自分自身で把握しておくと、早期の検査や予防につながります。
特に糖尿病チェックを意識すべき人の特徴は、以下の通りです。
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- 年齢が40歳以上
- 運動不足
- 肥満
- 家族に糖尿病の人がいる
- 高血圧や高脂血症がある
- 妊娠糖尿病歴がある
- 生活習慣の乱れ
- 喫煙や過度な飲酒
- 睡眠不足
- ストレスを抱えている
上記のような人は、血糖コントロールが乱れて糖尿病を発症するリスクが高い傾向があるため、定期的なチェックが推奨されています。
糖尿病は早期に気づけば、生活習慣の改善のみで進行を防げる可能性が高い病気です。
上記の特徴に1つでも当てはまる人は油断せず、はじめに血糖値やHbA1cをチェックしてみましょう。
自宅できる糖尿病セルフチェックのポイントを知って早期発見につなげよう
糖尿病は、初期段階では自覚症状がほとんどない病気であるため、自宅でセルフチェックをして早期発見につなげるのが重要です。
毎日の生活の中でちょっとした異変や習慣に気づいて早期発見できると、糖尿病の進行を抑制できます。
糖尿病のセルフチェックは、主に以下の2つの方法があります。
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- 自覚症状の確認
- 市販の検査キットを用いた検査
以下のような自覚症状や気になる項目がある場合は、糖尿病を発症している可能性があるため、早めに医療機関を受診する必要があります。
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- 過去5年間で体重が増えた
- 運動する習慣がない
- 歩くより車に乗っている時間の方が長い
- 下痢や便秘
- 外食が多い
- すぐにお腹がすく
- 手足のしびれや痛み
- 身体が乾燥している
市販の検査キットには、尿糖を調べる検査や血液を採取して血糖値を測定する検査があります。
通常健康な人の尿には糖はほとんど含まれていませんが、血糖値が一定以上に高くなると腎臓の再吸収機能を超えて、糖が尿中に漏れ出るようになります。
一般的に血糖値が160〜180mg/dLを超えると、再吸収が追い付かずに尿中に糖が出るため、尿糖の検出が可能です。
尿糖を調べる検査キットは、尿糖の生成される仕組みを利用して高血糖の有無を確認します。
血糖値を調べる検査キットは、少量の血液を採取して血糖値を測定する医療機器で、正確な数値が測定可能です。
さらに記録した数値は、医療機関受診時に活用が可能なため、持参してください。
糖尿病は気づかないうちに進行している可能性の高い病気であるため、自分の体の変化に敏感になり、小さなサインを見逃さないのが大切です。
検査結果や体調変化に不安がある場合は早めに医療機関を受診する
糖尿病は、初期段階には自覚症状がほとんどないまま進行するケースが多い病気のため、検査結果や体調の変化に不安がある場合は早めに医療機関を受診するのが大切です。
健康診断や自宅でのセルフチェックで以下のような結果が出た場合は、糖尿病予備軍または初期段階である可能性があります。
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- 空腹時血糖値が100~125mg/dL
- HbA1cが5.6~6.4%
- 尿糖が陽性だった
- 糖尿病に関連する自覚症状がある
上記のような結果の場合、体がすでに血糖コントロール不良を起こしているサインの場合があります。
糖尿病チェックを正しく行うには基礎知識の習得が基本となる
糖尿病は、早期発見と適切な管理によって、進行を予防できる病気です。
しかし、糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどないため、自分自身でセルフチェックをして早期発見につなげるのが重要となります。
糖尿病チェックを正しく行うためには、糖尿病に関する基礎知識の習得が欠かせません。
定期的な健康診断やセルフチェックをきっかけに、必要に応じて医療機関を受診しましょう。