近年注目されているアルロースは、自然界にはごく少量しか存在しない希少な糖で、低カロリーな甘味料として関心が高まっています。
本記事では、アルロースの基本情報や栄養的な特性、期待されている働きや摂取時の注意点などを詳しく紹介します。
この記事でわかること
- アルロースの基本情報
- 期待される健康効果
- アルロース含有の製品
- 摂取時の注意点
- アルロースへの期待と今後の展望
アルロースが気になる人、健康な身体で長く過ごしたい人はぜひ最後までご覧ください。
目次
アルロースは低カロリーで天然由来の甘味料である
アルロースは、自然界にごく微量のみ存在する希少糖の一種です。
化学的にはブドウ糖と非常によく似た構造を持つ単糖で、果物や加工食品の中に少量含まれています。
アルロースは、1940年に初めて発見されました。
アメリカの研究者たちによって、小麦の葉から微量成分として抽出されたのが最初の報告です。
ただし、当時は食品素材としての利用はまったく想定されておらず、長らく科学的な興味の対象にとどまっていました。
1990年代以降になってから、日本を中心とする研究グループが希少糖の一種としての生産技術に関する研究を進め、注目が高まっていきました。
アルロースの最大の特徴は、代謝経路にあります。
体内では約70%が小腸から吸収されるものの代謝されずに尿中へ排泄され、血糖値やインスリン分泌にほとんど影響しないという特性があります。
具体的には、1gあたりのエネルギーは0.2〜0.4kcal程度と、非常に低カロリーです。
日本の食品表示基準では100gあたり5kcal未満の場合はカロリーゼロと表示できるため、アルロースのカロリーは0kcalと記載できます。
アルロースは血糖値への影響が少なく健康効果が高い
アルロースは砂糖に似た甘味を持ちながら、カロリーはほぼゼロであり、血糖値への影響が少ないのが特徴です。
人間の小腸には、グルコースやフルクトースなど糖を分解吸収するための酵素があります。
しかし、アルロースはそれらの酵素と立体構造が合致しないため、分解されないのです。
小腸を通過し大腸へ到達してから、アルロースは腸内細菌によってもほとんど代謝されません。
アルロースは食後にも、血糖値の上昇を抑制する作用があると報告されています。
さらにブドウ糖と似た形をしているため、小腸の中でブドウ糖と同じ通り道に割り込むのです。
したがって、同時に摂取したブドウ糖の吸収速度が遅れ、血糖値の急上昇が緩和されます。
他にも、肝臓は血糖が足りないときに糖を作る工場のような働きをしますが、アルロースはこの工場のスイッチを切る働きがあると動物実験で分かってきました。
インスリン分泌への影響も小さいため、糖尿病やメタボリックシンドロームの予防、管理に有用です。
さらに脂質代謝改善や抗酸化作用、内臓脂肪の減少に関与する可能性も指摘されており、機能性食品成分としての注目が高まっています。
参照元:希少糖の健康面の機能-香川県
販売しようとする機能性表示食品の科学的根拠などに関する基本情報-消費者庁
希少糖入りの糖尿病食で2型糖尿病患者の食後血糖値を改善 2型糖尿病患者の新たな食事療法への応用に期待-香川大学
アルロースは甘味として汎用性が高いため利用が進んでいる
アルロースは癖のない自然な甘さで、後味の違和感が少ないとされています。
砂糖の使用量をそのまま置き換えられるため、とても汎用性の高い甘味料です。
加熱しても甘みが安定しているため、焼き菓子や煮物などにも活用できます。
さらには水にもしっかり溶けるため、飲料やドレッシングなどにも役立てられるのです。
健康志向の高まりとともに、アルロースの市場も急成長しており、コンビニの低糖質スイーツやスポーツ栄養食品などへの導入が拡大しています。
血糖値の変動に配慮した食事を心がけたい人から注目されている
アルロースは、血糖値の変動が気になる人にとって有用な選択肢です。
血糖値が急に上がるとインスリンが多く出され、動脈硬化や糖尿病、肥満などのリスク要因となります。
しかし、アルロースを一緒に摂ると、血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンの分泌も抑えられるのです。
この特性により糖質を制限しながらも甘みを楽しみたい人や、糖尿病の予防や治療中の人にとって、アルロースは頼もしい甘味料となります。
摂取カロリーを意識する人から関心が集まっている
アルロースは脂肪を燃やす働きをもつ可能性があり、近年の研究でそのメカニズムが少しずつ明らかになっています。
健康な成人男性に、アルロース入りの飲み物または入っていない飲み物を飲んでもらい、その後運動してもらう実験があります。
この結果、アルロースを含む飲料を飲んで運動すると、脂肪の燃焼が3割程度増加する事実がわかりました。
さらに同様の研究で運動せずに座って過ごしたものを比較しましたが、それでもアルロースにより脂肪の燃焼が高まるという結果が示されました。
考えられるメカニズムとしては、以下の3つです。
-
- 血糖値の上昇や食欲を抑えるホルモンが増える
- 筋肉に脂肪を取り込む力を高める
- 脂肪を燃やして熱に変える役割をもつタンパク質の働きを高める
アルロースには多くの可能性があるため、カロリー制限中の代替甘味料として取り入れる例も増えています。
アルロースを含む甘味料が様々に展開されている
アルロースを含む食品として、希少糖シロップがあげられます。
希少糖シロップとは、複数の希少糖を合わせて作られた甘味料です。
見た目や使い方は、はちみつや水あめに近いとされます。
使い方も簡単で、ヨーグルトにかけたりコーヒーや紅茶に入れたりします。
次に、低カロリー甘味料として販売されている液体状や粉末状のアルロース含有商品もあります。
液体状の商品は、純粋なアルロースを液体化した商品が多く、アルロースだけを使いたい人向けです。
インターネットで購入が可能であるものの、種類や容量の選択肢が少ない傾向にあります。
粉末状の商品は、家庭用に広く販売されており、純粋なアルロースのみで作成されている商品から乳酸菌やオリゴ糖を含む商品など様々あります。
砂糖のように使用できるうえ、計量も容易で、保存料を加えなくても安定して保存が可能です。
アルロースは摂取量や体質合わせた注意が必要である
アルロースは体内でほとんど吸収されずに大腸まで届くため、消化器系症状を引き起こす例があります。
具体的な症状は、腹部の膨満感や下痢、ガスの増加などです。
初めは小さじ1〜2杯から始め、体調に合わせて調整しましょう。
徐々に使用量を増やすと、安全性が高まります。
アルロースは肝臓で代謝されて腎臓から排泄されるため、肝臓や腎臓に持病のある人も慎重に使用してください。
さらに糖尿病治療中の場合も、薬との相乗効果で低血糖に陥る可能性があります。
このような持病や体質のある人は、医師と相談の上で使用するのが望ましい甘味料です。
妊娠中や授乳中の人はアルロースを摂っても重大な害が報告されているわけではありませんが、安全性を裏付ける十分な根拠はまだ示されていません。
アルロースと似た甘味料は存在している
アルロースと類似した、他の甘味料との違いを紹介します。
1つ目は、自然界に微量存在する糖アルコールの一種であるエリスリトールです。
エリスリトールは砂糖の約70%程度の甘さを持ちながら、カロリーはほぼゼロに近く、血糖値をほとんど上昇させない特徴があります。
腸内で吸収率が高く、大部分が尿として排出されるため、腹部膨満感や下痢といった副作用が抑えられるのも利点です。
エリスリトールとアルロースはどちらも血糖値への影響が抑えられている一方で、機能性には違いがあります。
アルロースはインスリン抵抗性の改善や脂肪蓄積の抑制といった生理機能が報告されており、健康効果がより期待されます。
一方、エリスリトールはアルロースよりカロリーがゼロに近く、比較的安価である点が強みです。
味の面では、エリスリトールは冷涼感が強く、後味は飲み手を選ぶ場合があります。
2つ目は、南米原産のシトウキ植物の葉から抽出される天然甘味料のステビアです。
ステビアは砂糖の約200から300倍ほどの強い甘さを持ちながら、カロリーはほぼゼロで血糖値への影響もほとんどありません。
ただし、濃度が高いと苦味や渋みが感じられるほか、後味に甘草のような独特の風味をもつ製品もあるため好みが分かれます。
ステビアの特徴は、抗酸化作用や抗炎症作用、インスリン感受性の改善などです。
日常的に砂糖の代替として自然な甘さを得ながら、食後血糖の抑制や体重管理の補助機能を期待する場合はアルロースが適しています。
3つ目は、フェニルアラニンとアスパラギン酸の2種類のアミノ酸からなる人工甘味料のアスパルテームです。
100グラムあたり約4キロカロリーであるものの、非常に甘みが強いため使用量は砂糖の約200分の1で済みます。
熱にやや弱く、高温調理では劣化して甘味が失われる場合があるため、加熱加工食品には不向きです。
味わいは砂糖に近いものの、製品によってはわずかな苦みや口の中にじんわりと残る甘みが後味として感じられる場合もあります。
甘味料名 | 甘さ (砂糖比) |
カロリー (kcal/100g) |
血糖値影響 | 製造方法 |
---|---|---|---|---|
アルロース | 約70% | 約0.2〜0.4 | 下がる | 希少糖 天然由来 |
エリスリトール | 約70% | 0
※日本基準 |
影響なし | 糖アルコールの一種 天然由来 |
ステビア | 200〜300倍 | 0 | 影響なし | ステビア植物から抽出 天然由来 |
アスパルテーム | 200倍以上 | 約4
(理論値) |
使用量が少ないために影響なし | 人工甘味料 原料は天然のアミノ酸 |
参照元:食べても栄養にならない糖?エリスリトール-日本応用糖質学会
「ステビア」って、どのようなものですか?-日本清涼飲料連合会
よくある質問(FAQ)
Q1. アルロースは糖質制限中に使えますか?
A.はい、アルロースは糖質制限中でも汎用性の高い甘味料とされています。
ただし、人によってアルロースの影響は異なるため、食事全体の調和を考えながら無理のない範囲で使用しましょう。
Q2. アルロースは自然由来ですか?
A.はい、アルロースは自然由来の甘味料です。
自然界の果物やはちみつ、発酵食品などに微量に存在しています。
市販されているアルロースはとうもろこしなどの植物由来のブドウ糖を原料に、酵素を使った生物学的な製法で生産されています。
このため、合成甘味料ではなく、天然由来の成分としての扱いとなる製品です。
Q3. 毎日摂っても問題ない?
A.アルロースは、人体に対して安全性が高い甘味料です。
ただ、個人の体質や摂取量によっては体調に変化が出る場合もあり、様子を見ながらの使用がすすめられます。
アルロースは機能性と持続可能性を兼ね備えた次世代甘味料である
健康志向の高まりとともに、糖質制限やカロリー制限を目的とした食品において、アルロースへの要望は高まっています。
特に注目されているのが、アルロースの血糖値やインスリン分泌への影響に関する研究です。
様々な生活習慣病の予防にもつながる可能性があり、機能性表示食品や特定保健用食品などの開発においても、有望な素材として研究が進んでいます。
食後の代謝過程や脂質代謝への影響など、さらに複雑な生理的反応に焦点を当てた研究も行われており、アルロースの生理作用に関する理解が深まりつつあります。
アルロースの機能性を実用化するため、さまざまな取り組みが行われています。
食後の血糖値上昇を抑える低GI製品と組み合わせた健康食品や、スポーツ栄養製品への応用など、開発の幅も拡がってきています。
特に血糖値の安定が求められる高齢者向け食品や、生活習慣病予防を目的とした食事において、アルロースは有用な甘味素材としての地位を築き始めているのです。
さらに、アルロースの製造工程において、将来にわたって環境や資源を守るという視点からも注目されています。
従来の甘味料の大半が石油由来成分を含むか、あるいは環境負荷の高い製造工程が必要です。
アルロースは植物由来の糖から酵素反応によって生成されるため、自然環境との調和にも配慮された素材とされています。
Event & News | International Institute of Rare Sugar Research and Education-香川大学
アルロースは甘味と栄養的特徴を兼ね備えた注目の希少糖である
改めて、アルロースは近年その存在感を急速に高めている希少糖のひとつです。
ブドウやイチジクなどに微量ながら含まれており、自然由来でありながらも摂取カロリーがほとんどゼロに近いという栄養的特徴を持ちます。
一般的な糖に対して7割程度の甘さを持ちながら体内でほとんど代謝されず、エネルギー源にならない点が大きな特徴です。
そのため、多くの人々から注目を集めています。
今後は機能性表示食品や健康食品分野を中心に、多くの製品にアルロースが使用されるようになる見込みです。
将来的にはアルロースの製造技術がさらに向上し、費用や供給量の課題が解決されると、一般家庭でも広く使われる甘味料となる可能性も十分あります。
このようにアルロースはその特性から単なる代替甘味料にとどまらず、健康と美味しさの両立を目指す現代の食文化に合った、次世代の甘味料として期待されています。
これからの研究や商品開発にも、ぜひ注目してください。