ワイン好きの方であれば「赤ワインは健康にいい」——そんな話を耳にしたことがある方は多いでしょう。その秘密は「ポリフェノール」にあると言われています。実は白ワインと比べて5〜10倍もの差があることをご存知ですか? この記事では、赤ワインのポリフェノールについて、白ワインとの違い、含有量の目安、効果の考え方、賢い選び方まで、科学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。
健康やポリフェノールに興味があり、「白ワインとの違いが気になる」「1杯でどれくらい摂れるの?」「本当に効果はあるの?」といった疑問をもったことのある方は是非読んでみて下さい。
飲み物別ポリフェノール量の比較
赤ワインのポリフェノール含量は飲み物の中でトップクラス

抗酸化力が高く、健康維持に役立つ成分として知られるポリフェノール。身近な食品や飲料にも含まれます。身近な飲料と比較したところ、赤ワインは100mlあたり230mgと、一般的な飲料の中で最も高いポリフェノール含有量であることがわかります。100mlあたりの含有量で比較すると、緑茶の約2倍、麦茶の約7倍以上ものポリフェノールが含まれます。実は赤ワインはお茶よりもポリフェノールが多い飲み物なんですね。
参考文献: Fukushima, Yoichi, et al. 2009
1杯あたりの目安量でみると、飲む量が多いコーヒーがわずかに上回ります。とはいえ、この数値は飲む量に依存します。ある意味では赤ワインの方がコーヒーより少量でも効率よくポリフェノールを飲むことができるとも言えるでしょう。
ワインに含まれるポリフェノールの種類|赤ワインと白ワインの基本

赤ワインのポリフェノール量は白ワインの5-10倍
ワインには大きくわけて赤ワインと白ワインがあります。ではどちらがポリフェノールが多いのでしょうか?結論から言うと、ポリフェノールの「量」も「種類」も、一般的には赤ワインの方が圧倒的に多く、白ワインは少なめです。
研究レビューによると、総ポリフェノール量は平均的に赤ワインが約2,000〜3,000mg/L、白ワインが約200〜400mg/Lという範囲が多く報告されており、赤ワインは白ワインの5〜10倍程度になることも珍しくありません。

参考文献: 佐藤充克.ブドウとワインに含まれるポリフェノール類の健康効果 (2018)
また、赤ワインには赤色の色素成分であるアントシアニン、渋み成分であるタンニン(プロアントシアニジン)、他にレスベラトロールといった皮・種由来のポリフェノールが多く含まれます。一方、白ワインは構成が比較的シンプルで、非フラボノイド系のポリフェノールが主成分です。
参考文献: Ina Corkovic et. al., 2024
つまり、見た目の色の違いだけでなく、成分構成と量が異なるのが赤ワインと白ワインのポリフェノールの大きな違いなのです。

白ワインに含まれるポリフェノールについて少し詳しく解説します。白ワインには、非フラボノイド系のポリフェノールであるヒドロキシ桂皮酸誘導体などが多く含まれます。
赤ワインにポリフェノールが多いのは皮や種ごと使うため


赤ワインと白ワインのポリフェノールの違いが生まれる最大の理由は、ワインを作る時ぶどうの皮や種と果汁がどれくらいの時間、接触した状態で発酵するかという醸造工程の違いにあります。
赤ワインは、皮・種・果汁を一緒に発酵(マセラシオン)させるため、アルコール発酵中にポリフェノールが大量に抽出されます。一方、白ワインは先に搾汁して皮・種を除いてから発酵するため、ポリフェノールの含量が少なくなります。



マセラシオンとはワインを作る工程の一つ。潰したブドウの皮や種をジュースに漬け込んで成分を抽出する作業のことです。赤ワイン造りでは発酵と同時進行で行われることが多い工程です。


ポリフェノールは果肉よりも皮や種に多く含まれる成分です。実は果汁に含まれるポリフェノールの量は5%程度しかありません。そのため製造工程で皮や種が使われるかの差がそのまま赤ワインと白ワインのポリフェノール量の差につながるわけです。
参考文献: 佐藤充克.ブドウとワインに含まれるポリフェノール類の健康効果 (2018)
なお、白ワインでも皮と接触させるスキンコンタクト製法などは、通常の白よりポリフェノールが多くなる例もあります。つまり、差を決めているのは「色」ではなく「製法」であることが本質なのです。



スキンコンタクト製法は白ワインをより香り高く、味わい深くするために、絞る前に少しだけ「皮の成分」をワインに写す方法です。
スキンコンタクト:白ワインに香りを添える醸造の技 | ワインを最高に楽しむ知識
赤ワインのポリフェノール含有量は何で決まる?
赤ワインの中でもぶどう品種・製法で含量が変わる


同じ赤ワインでも、ポリフェノール量には大きな幅があります。この量を決める要因は次の3つです。
- ぶどうの品種
- 発酵、マセラシオンの長さ
- 熟成、発酵の条件
先にも書きましたが、ポリフェノールは果皮に由来するので果皮が厚い品種はポリフェノールが多くなりやすい傾向があります。具体的にはカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーなどはポリフェノールが多くなります。また、発酵、マセラシオンの期間が長く、皮や種とワインが長期間接触するほど、ポリフェノールの抽出量は増加します。さらに、樽熟成や発酵温度なども、ワインのポリフェノール構成に影響を与えると言われています。
ポリフェノールと赤ワインの効果は本当にある?
赤ワインの健康効果に関する研究の歴史


では次に気になる健康効果について解説します。赤ワインに含まれる多種多様なポリフェノール化合物は、様々な分野で中心的な研究対象となってきました。
特に有名な研究は1990年代初頭に提唱された「フレンチ・パラドックス」です。この研究はフランス人の脂肪の摂取量が多いにもかかわらず心血管疾患の発症率が低いという疫学的観察です。この報告以来、その背景にある生理活性物質としてのポリフェノールの役割が注目されてきました。
近年の研究では、ポリフェノールには抗酸化作用があることのみならず、遺伝子発現の調節、シグナル伝達経路の修飾、さらには腸内細菌叢との相互作用を通じて、広い健康効果をもたらすことが示唆されています 。



ワインと認知機能に関する研究も以前、健康記事に書きました。参考にしてください。


フレンチパラドクスと赤ワインの最新研究
フレンチ・パラドックスと赤ワイン摂取に関する研究は現在も続いています。2025年最新のレビュー論文では赤ワインの摂取により脂質プロファイルの改善、抗炎症・抗酸化作用、血管内皮機能の向上、腸内フローラの変化により心臓を保護する可能性が示唆されました。
参考文: Bakht D,et al., 2025
特に心血管保護作用は、赤ワイン・ポリフェノールの研究において最もエビデンスが蓄積されている領域である。「フレンチ・パラドックス」の核心は、赤ワインが血管内皮機能を維持し、動脈硬化のプロセスを多角的に阻害する点にあるといえます。
ただし、これは、赤ワインを飲めば病気を予防できるという意味ではありません。後の章でも述べますが赤ワインはお酒である以上、飲む量などには注意する必要があります。
成分別にみた赤ワインのポリフェノール
最も多いポリフェノール:プロアントシアニジン(縮合型タンニン)


プロアントシアニジンは、複数のポリフェノールが結合(重合)したものです。強い抗酸化作用を持ち、ビタミンCの約20倍、ビタミンEの約50倍とも言われています。プロアントシアニジンは縮合タンニンとも呼ばれ、ワインの「渋み」の主成分です。特にぶどうの種子に含まれます。
日本人におけるブドウ種子エキスの摂取が、酸化LDL(動脈硬化の原因因子)を抑制することが報告されています。
参考文献: Bagchi, D., et al. (2000). Sano, A., et al. (2007)
このような複数のポリフェノールが重合したプロアントシアニジンはアカシア樹皮由来抽出物においても主要な成分ですが、構造的には少し異なることが分かっています。
参考文献: Kusano et al., (2010)



少し詳しく解説すると、アカシア樹皮抽出物に含まれるプロアントシアニジンはロビネチニドールやフィセチニドールなどのユニークな構造をもったポリフェノールなのです。
話題の成分:レスベラトロール


赤ワインで特に有名な成分なのがレスベラトロールです。研究も盛んにおこなわれており、テレビなどの特集に取り上げられることも多くあります。
このレスベラトロールの量も白ワインに比べて、赤ワインの方が多く含まれます。
ただし、赤ワインに含まれるレスベラトロールの量は1杯あたり約0.2〜0.3mg程度と少量です。総ポリフェノール(約200mg)から算出されるとごく一部に過ぎません。
参考文献: 佐藤 赤ワインの健康効果レスベラトロールについて
レスベラトロールの具体的な研究としては長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子の活性化に関与することが明らかとなっています。サーチュイン遺伝子の活性化には老化防止や若返りの効果が期待されています。また、特定の薬とレスベラトロールの相互作用の研究なども盛んに行われています。
参考文献 Schultz MB et. al., 2020, Salla M et. al., 2024, Gregoriou Y et al., 2021, 後藤 レスベラトロールと赤ワインは健康寿命を延ばす
赤ワインのポリフェノールは「効果なし」と言われるのはなぜ?
「効果なし」になりやすいアルコールの問題
赤ワインに含まれるポリフェノールには心血管保護作用などから健康効果が期待されますが効果がないと言われる場合もあります。最も大きな要因はアルコールです。赤ワインには10%程度のアルコールが含まれており、アルコールによる健康リスクがポリフェノールの利点を上回り、健康効果が打ち消される可能性があります。最新の研究結果からは少量でもアルコールが体にいいとは言えないという見解です
参考文献: Kiran J. Bet.al., 2022
これらの結果から赤ワインにはポリフェノールを含め、健康効果が期待できる成分が含まれていますが、病気を予防できるという意味ではありません。アルコールを含むお酒である以上飲みすぎには十分注意しましょう。
具体的に赤ワイン1杯で摂れるポリフェノール量
赤ワイン1杯あたりのポリフェノール量の目安は200mg前後


赤ワインの総ポリフェノール量が仮に1,800mg/Lの場合、1杯あたりの量は120~150㎖ この数値から換算すると、赤ワイン1杯(120〜150mL)で約200mg前後が実用的な目安とされています。ただし、これは平均的なワインを想定した数値であり、ワインの種類によって100mg台から300mg以上まで幅がある点は理解しておく必要があります。
そして、重要なのは、ワインの飲む量と健康効果は比例しないという点です。
アルコール摂取量の観点からは、健康リスクを高めないための飲酒量管理が最優先となります。厚生労働省「健康日本21」では節度ある適切な飲酒として、1日平均純アルコールで約20g程度(約 1.5 ~ 2 杯)としています。
参考文献: 厚生労働省 健康21 アルコール
このように赤ワインを「何mg摂れば健康になるや何杯のめば健康になる」といった明確な基準はありません。アルコール量から考えて、多くても1日に1~2杯と決めて飲むことをお勧めします。


ポリフェノールを意識した赤ワインの選び方


「品種」からポリフェノールの多いワイン選ぶ
先ほど同じ赤ワインであってもポリフェノールの量が違うことをお伝えしました。少量の飲酒でポリフェノール量の多いワインを選ぶというのも良い選択です。
比較的ポリフェノールが多くなりやすい品種には、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、マルベックなどがあります。これらの品種のぶどうは皮が厚く、ポリフェノール抽出量が多くなりやすくなります。実際にポリフェノール量を比較した報告では同じ赤ワインでもぶどうの品種により3倍程度の差があることがあります。
参考文献: 佐藤 2009
「味や色」からポリフェノールの多いワイン選ぶ
しかし、ワインに詳しくない方からすると、品種名はピンとこないかもしれません。そこで見た目や味で選ぶという方法もあります。ポイントは、色が濃く、渋みがしっかりあるワインを選ぶことです。これらは赤ワインのポリフェノール量はぶどうの皮や種子に由来するので色が濃く、渋いはポリフェノールが多いことの官能指標になります。
まとめ
赤ワインのポリフェノールは、白ワインより量が多く、製法・品種で大きく変わり、1杯あたり約200mg前後が目安と整理できます。赤ワインにはプロアントシアニジンやレスベラトロールといったポリフェノールが含まれ、健康効果についても研究が進んでいます。
しかし、赤ワインの健康効果はポリフェノール成分量だけで決まるものではありません。特にアルコールを含むお酒である以上飲酒量管理と生活習慣が前提条件となります。最新の研究では少量でもアルコールは体に良いとは言えないという見解です。
赤ワインは「健康食品」ではなく、生活を楽しみながら成分も摂れる嗜好品として、賢く取り入れることが大切です。



いかがでしたか?以前のワインやアルコールに関する記事をまとめました。こちらも読んでみて下さい。
