「塩分の取り過ぎはカラダに良くない」。
分かってはいるけど、それでもやっぱり塩分の多い物はおいしいですよね。
そんな塩分ですが、実際に取り過ぎた場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。
今回の記事では、塩分を取り過ぎた場合の対処法についてご紹介します。
また、塩分を取り過ぎるとどうなるのか、どれぐらいの量に抑えるべきなのかも解説します。
目次
1. 塩分を取り過ぎた場合の対処法
取り過ぎた塩分を身体の外に出す方法は、基本的には2つです。
ひとつは尿から出す方法。
もうひとつは汗として出す方法です。
1-1. 水を飲んで排尿を促し、余分な塩分を外に出す
カラダの中の塩分量は、腎臓によってコントロールされています。
水を飲むことによって、取り過ぎた塩分を、腎臓経由で尿として体の外に出すことができます。
1-1-1. コーヒーやお茶で利尿作用を上げる
水分をとって尿の量を増やすだけでなく、カフェインをとることで排尿の回数を増やすことができます。
カフェインというとコーヒーが思い浮かぶかと思いますが、実はお茶にも含まれています。
特に玉露茶はコーヒーよりもカフェイン量が多いのです。コーヒーが苦手な方は代わりにお茶を飲みましょう。
種類 | 100 gあたりのカフェイン量 |
---|---|
玉露 | 160 mg |
コーヒー | 60 mg |
紅茶 | 30 mg |
ウーロン茶 | 20 mg |
煎茶 | 20 mg |
ほうじ茶 | 20 mg |
1-1-2. 牛乳を飲んで塩分を排出するカリウムを摂取する
カリウムは塩分の排出を助けてくれる栄養素です。
牛乳にはカリウムが多く含まれており、牛乳を飲むことで塩分の排出がさらに促進されます。
また、食事としては、アボカド、ほうれん草、納豆もカリウムが豊富なのでおすすめです。
1-2. 運動して汗を流す
運動して汗を流すと、水分と一緒に塩分も、カラダの外に排出されます。
流した汗の0.3%が塩分です。
汗をかけばよいので、運動が苦手な方には、サウナや半身浴もおススメです。
体温が上がり、汗の量を増やせます。
2. 1日あたりの塩分摂取量の目標値
では1日にどれぐらいの塩分を取るのが良いのでしょうか。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、塩分については、普段の食生活では不足することがほとんどないため、これぐらい頑張って取りましょうという推奨量はありません。
むしろ、取り過ぎるとカラダに良くないので、この量以上は摂らないようにしましょうという、目標値が設定されています。
2-1. 1日あたりの塩分摂取量の目標値は女性が6.5 g、男性は7.5 g
1日あたりの塩分摂取量の目標は、女性が6.5 g未満。
男性が7.5 g未満。
女性は小さじ1杯強、男性は小さじ1杯と1/4杯程度の量となります。
2-1-1. 日本人は毎日平均で10.1gの塩分を摂取している。
ちなみに、2019年国民健康・栄養調査によると、日本人の1日の食塩摂取量の平均はなんと、10.1 g。
男性が10.9 gで、女性が9.3 g。
多くの日本人が塩分を取り過ぎていることが分かります。
2-2. 高血圧の方の1日あたりの塩分摂取量の目標値は6.0 g以下
高血圧の方については、日本高血圧学会により1日6.0 g未満に抑えるように推奨されています。
引用元:日本高血圧学会
2-3. 妊婦さんの1日あたりの塩分摂取量の目標値も6.5 g
妊娠中の方についても、1日6.5 g未満。
小さじ1杯強未満には抑えることが目標となっています。
2-4. 1歳児の1日あたりの塩分摂取量の目標値は3.0 g未満
1歳児の目標量は3.0 g未満。
小さじ1/2ぐらいの量です。
2-5. 幼児の1日あたりの塩分摂取量の目標値は年齢によって異なる
幼児に関しては、年齢によって目標量が違います。
下記の表を参照ください。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1~2歳 | 3.0 g | 3.0 g |
3~5歳 | 3.5 g | 3.5 g |
6~7歳 | 4.5 g | 4.5 g |
8~9歳 | 5.0 g | 5.0 g |
10~11歳 | 6.0 g | 6.0 g |
12~14歳 | 7.0 g | 6.5 g |
15~17歳 | 7.5 g | 6.5 g |
3. 塩分の取り過ぎが健康を害する理由
では実際に塩分を取り過ぎると、どのようにカラダに良くないのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
3-1. 血液中の水分量が増えて血圧が上がってしまう
塩分を取り過ぎると、浸透圧の関係で血管の中の水分量が増え、その結果血圧が高くなります。
慢性的な高血圧は血管が硬くなる動脈硬化を引き起こし、その先には心不全や脳卒中、腎不全などの合併症を引き起こします。
4. 塩分を取り過ぎた場合の症状とは
塩分を取り過ぎると、カラダにもその症状があらわれてきます。
ここでは塩分を取り過ぎているときにおこる症状を説明します。
4-1. 喉が異常に乾く
塩分を取り過ぎると、カラダの細胞から水分が抜けてしまい、カラカラの脱水状態になってしまいます。
そのため、強い喉の渇きを感じます。
引用元:豊橋ハートセンター
4-2. むくみがひどい
むくみについても同様に、細胞から水分が抜け出ることが原因です。
細胞から抜けた水分が、細胞の外にたまることによってむくんだ状態になってしまうのです。
引用元:豊橋ハートセンター
4-3. 頭痛がする
塩分を取り過ぎると、頭痛が起きることがあります。
これは、塩分の取り過ぎで血圧が上がることにより、脳内の血管が膨らんで神経を刺激することが原因と考えられています。
4-4. 味がしなくなる
味覚にも症状がでることがあります。
塩分の過剰摂取によって、舌の上で味を感じる味蕾(みらい)の感度がおかしくなり、味がしなくなります。
また塩分を取ればとるほど、さらに味を感じるために多くの塩分が必要となる悪循環に陥ります。
コラム:塩分を取り過ぎた翌日は体重が増えるってホント?
本当です。この場合の体重増加の原因は、ほとんどが水分の過剰摂取によるものです。
前述のとおり、塩分を取り過ぎると、細胞が脱水状態となり、カラダが水分を欲します。
それにより普段よりもたくさんの水を飲むため、その水分の重さにより体重が増えます。
5. 塩分取り過ぎが原因で起こる病気
塩分の取り過ぎは、様々な病気に繋がります。
ここでは塩分の取り過ぎによって、どのような病気に繋がるのかを見ていきましょう。
5-1. 高血圧
代表的なものは高血圧です。
高血圧が怖いのは、血管が硬くなる動脈硬化と、それによる心不全、脳卒中、腎不全などの循環器系の疾病です。
慢性的に血圧が高い状態が続かないよう、日頃から減塩を心がけましょう。
コラム:塩分の影響を受けやすいタイプ「食塩感受性高血圧」とは
そんな高血圧ですが、人によって塩分の影響を受けやすい人と、そうでない人の2タイプがあるのはご存じでしょうか?
完全な要因はまだ明らかになっていないようですが、腎臓での塩分排出機能が強い人と、弱い人がいるようで、それによって塩分をとったときの血圧の上がり方に差がでるそうです。
また、高齢になるほど食塩感受性が上がるとも言われています。
引用元:医療法人財団慈生会 野村病院
5-2. 腎不全
塩分を排出する働きをしてくれている腎臓ですが、慢性的な塩分過多と高血圧が続くと、腎臓のフィルター機能がダメになり、その働きが落ちてしまいます。
慢性の腎臓病が悪化すると「腎不全」を招き、場合によっては透析治療が必要になることもあります。
5-3. 骨粗鬆症
塩分を取り過ぎると、骨からカルシウムが溶け出し、骨粗鬆症を引き起こす危険性があります。
骨の量が減少してスカスカになってしまい、骨折しやすくなる病気です。
引用元:医療法人杉山会すぎやま病院
5-4. 尿路結石
また、骨から溶け出したカルシウムによって、尿の中のカルシウム量が増えることにより、尿路結石という病気の可能性もあります。
尿路結石は、尿が排出される通り道に結石ができてしまう病気です。
引用元:旭川医科大学
5-5. 胃がん
塩分の過剰摂取は胃がんのリスクを高めると報告されており、摂取量が増えるにしたがい、胃がんのリスクが高くなるという報告があります。
5-6. 妊娠中の塩分取り過ぎは「妊娠高血圧症候群」を引き起こすことがあるため要注意
妊娠中の方は特に、塩分の取り過ぎにも気を付けることが大事です。
妊娠中に高血圧を発症した場合は妊娠高血圧症候群と呼ばれ、重症化しやすく注意が必要です。
引用元:公共社団法人 日本産科婦人科学会
5-7. 1歳児は小さじ1杯(5~6 g)の食塩でも重大な中毒になる恐れがあるため注意
1歳児など乳幼児については、塩分の取り過ぎには特に注意をしてください。
重大な中毒の場合には、小さじ1杯の塩分過剰摂取により、死亡事故が起こったケースもあります。
5-7-1. 1歳児が塩分を取り過ぎた場合の症状は、「嘔吐」、「下痢」、「痙攣」、「硬直」
誤って塩を過剰に摂取した場合など、急性の症状として嘔吐、下痢、痙攣、硬直などが見られます。
5-7-2. 誤って塩分を取り過ぎてしまった場合は、早めに病院へ。
普段の食生活の中で塩分が多めだなというぐらいであれば、減塩を心がけるなどで良いですが、瞬間的に大量の塩分を過剰摂取して体調が悪くなった場合には、早めに病院へ相談するのが良いでしょう。
6. 塩分摂取量の調べ方
どれぐらい塩分を摂取しているのかはどのように調べるのでしょうか。
基本的に病院で検査することと、市販の測定器を使う方法の2つがあります。
6-1. 病院で尿検査を受ける
病院で尿検査を受ければ、尿中の塩分濃度から塩分摂取量を調べてもらうことができます。
6-2. 市販の塩分摂取量簡易測定器を使って自宅でも測定できる
最近ではインターネット上で塩分摂取量簡易測定器も市販されていますので、それを購入することで自宅でも塩分摂取量の測定が可能です。
7. 調味料ごとの塩分量の目安
調味料ごとの塩分量の目安を知っておくと、料理をするときなどにも大まかな計算ができます。
下記が代表的な調味料の塩分量です。
調味料 | 塩分量 |
---|---|
食塩(小さじ1) | 5.9 g |
濃口醤油(大さじ1) | 2.6 g |
薄口醤油(大さじ1) | 2.9 g |
トマトケチャップ(大さじ1) | 0.5 g |
コラム:一味唐辛子や七味唐辛子には塩分は含まれていません。
牛丼やうどんなど、入れたくなる一味唐辛子や七味唐辛子。
これらには塩分は含まれていません。
8. 食品の塩分量の調べ方
塩分過多の原因としては、市販の加工品やレトルト食品など塩分の多い物を食べすぎてしまうことが原因としてあります。
ここで塩分を取り過ぎないようにしっかりとチェックしましょう。
8-1. 栄養成分表示の「食塩相当量」を見るべし
加工品など一般で販売されている食品については、ほとんどの場合に栄養成分表示に「食塩相当量」が記載されています。
そのため、この食塩相当量の量で計算してください。食塩相当量の記載がない場合は、ナトリウム(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)で計算ができます。
9. 塩分の多い食品ランキング
塩分過多になりがちな、特に気を付けるべき食品をご紹介します。
9-1. 1位 カップ麺
1位は手軽でついつい夜食に食べてしまいたくなるカップ麺です。
カップ麺には多量の塩分が使われており、1食で5 g以上の塩分を摂取することになってしまう場合が多いです。
これだけで1日の目標量に収めるのがかなり難しくなります。
9-2. 2位 インスタントラーメン
2位はインスタントラーメンです。こちらも同様に5 g以上の塩分摂取になってしまうので、避けたい食品です。
また、仮に食べるとしてもスープは飲み干さないなど、できるだけ塩分を取り過ぎないように工夫が必要です。
9-3. 3位 梅干し
3位は梅干しです。
塩漬けで作るため製造上、かなり塩分が高くなります。減塩の梅干しを選ぶ、半日ほど水につけて塩抜きするなどで、できるだけ減塩しましょう。
10. 塩分を排出するカリウムをバランスよくとろう
塩分取り過ぎへの対処法の基本は、まずとにかく塩分を取らないこと。
そしてもう一つがカリウムをとることです。前述の通り、カリウムは塩分の排出を助けてくれます。
10-1. 1日のカリウム摂取の目安量は女性が2,600 mg、男性3,000 mg
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、生活習慣病の予防を目的とした成人1人1日当たりのカリウム摂取の目標量を、女性2,600 mg以上、男性3,000 mg以上としています。
10-1-1. 日本人の1日の平均カリウム摂取量は、女性2,215 mg、男性2,384 mg
日本人の1日の平均カリウム摂取量は、男女ともに目標量には足りていません。
意識的にカリウムの多い食品をとるように心がける必要があります。
引用元:健康ネット
10-2. カリウムが多い食べ物はアボカド、ホウレンソウ、納豆、牛乳
カリウムを多く含む食品としてまず上がるのがアボカド。
アボカドには1個で826 mgのカリウムが含まれています。
次がほうれん草で100g中に690 mg。納豆にも多く100 gで660 mgのカリウムをとることができます。
前述の100 mlの牛乳には150 mgのカリウムが含まれています。
10-3. カリウムは水溶性なので、切らずに丸ごとゆでる、焼く、蒸す、レンジで加熱しよう
カリウムを効率的に摂取するためには、切らずに丸ごと茹でるか、焼く、蒸す、レンジ加熱での調理にしましょう。
カリウムは水に溶けやすいので茹でると流れ出てしまいます。
コラム:腎臓に機能障害があるとカリウムを排出できないため要注意
カリウムは塩分の排出を助けてくれる栄養素ですが、腎機能が弱っていると逆にカリウムを排出できずに、カリウムがカラダの中にたまっていってしまうことがあります。
そのため、腎機能に問題があるかたはかかりつけのお医者様にご相談ください。
11. 減塩の方法
基本の対処法である減塩ですが、とはいえ塩がないと、普段の食事も味気ないものになってしまいます。
減塩しながら満足感もできるだけ高める方法をご紹介します。
11-1. しょうゆやソースは、「かける」のではなく「つけて」食べる
まず、しょうゆやソースを使う場合ですが、必ず「かける」のではなく、醤油さしや小皿にソースをいれて、「つけて」食べるようにしましょう。
かけるとどうしても量が多くなってしまいます。小皿に少し出して必要な分だけをつけることがポイントです。
11-2. 出汁などのうま味成分で満足感を上げる
減塩すると塩味が減ります。その分は出しなどのうま味成分を加えることで補うことができます。
お手軽な方法は市販のうま味調味料を使うこと。
それ以外にも炒め物にお酢を加える、香辛料などのスパイスを使うことでも、味のバランスがとれて満足感アップに繋がります。
11-3. 汁ものは野菜をたくさん入れて汁を少なめに
気を付けたいのがお味噌汁などの汁物。できるだけ野菜をたっぷり入れて具で満足感を高めましょう。
しめじや舞茸などキノコ類はうま味もたっぷりで食物繊維も豊富でおすすめです。
11-4. ラーメンのスープは飲み干さない
癖づけていただきたいのは、とにかくラーメンのスープは飲み干さない、ということです。
スープになっているので飲みやすく気づきにくいですが、かなりの塩分が入っています。
12. まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、塩分を取り過ぎた場合の対処法、それによる健康リスクについて紹介してきました。
対処の基本はとにかく減塩すること、そして排出することです。
いずれにしても長期的な塩分過多は高血圧となり、様々な健康リスクを高めます。
うま味など活用しながら、塩分の少ない生活を心がけましょう。