高級寿司店で最低限知っておきたいマナーまとめ

お寿司が大好きな日本人!回転ずしから、板前さんが握るリーズナブルなお寿司、はたまたメニューも無い高級寿司まで、日本はあまたのお寿司屋さんがあります。メニューもない、看板もない、暖簾しかかかってない高級寿司店に一度は行ってみたいところ!まず口コミサイトを調べても、お店は出てくるが一体何処のお店すればいいの?と迷いますよね!

そんなあなたに“失敗しない高級寿司店の”選び方や楽しみ方をご紹介します。

1.高級寿司店とは

食の宝庫日本にはいろんなジャンルのレストランがあり、それぞれ最高級と呼ばれるお店も多く存在します。では、お寿司に限って言えば高級寿司店とはどのような店をいうのでしょう。これはもちろん価格が基本にあるのは間違いありません。そして価格は、ネタと呼ばれる素材や味を最高に高める技術にも反映されます。さらに立地も条件になる場合もあります。

1-1.一味違うカウンター越しでの愉しみ方

しかし私が思うに、高級寿司店と呼ばれるお寿司屋さんは、これらのネタや技術の条件に付けくわえて、カウンター越しに職人さんがお客さんを相手にお寿司を直接振る舞うことにあると思います。これはレストランと大きく違うところです。職人さんが相手にできるお客さんには限度があります=目の届く範囲でしが食を提供しないこだわり。ですから、高級寿司店は比較的こじんまりとした、10席前後の店が多いのです。おのずと価格も高めになりますよね。でもそこには値段にふさわしい楽しみ方があるのです。


引用:銀座久兵衛

2.高級寿司の暗黙のマナー

それでは 高級なお寿司屋さんに初めて行くときには、何か気を付けることが無いか?気になりますよね。でもお金を出して食べに行くのですから、そんなに気を使うことはありません。ましてや一流店なのですから、職人さんの接客対応もきちんとしいます。そうなれば、ゆっくりと名店の味を楽しみたいものです。そこでこの章では心がけたいマナーや豆知識をご紹介します。

2-1.注文はお任せコースが基本

初めてのお店は何をどのように頼んでよいか迷いますよね!まずは予約時にコースなどあるのかを聞いておきましょう。わかりやすく説明してくれます。私の経験ではコースがある店と、【お任せ】のコースのみの店とさまざまです。※コースなどの場合はレストランと違い、一通りコースの握りがすんだら、板さんが聞いてきます。‘一通りでましたが、追加で握りましょうか?’と。おそらく追加で1貫1000円~2000円程度だと思います

2-2.メニューはない

経験上、メニューに関していえば、飲み物のリストはありますが、お寿司の価格やネタの種類などのメニューと呼べる情報も無い店がほとんどです。ガラスケースに入ったオススメのネタを紹介してくれます。
本日のおすすめは〇〇と〇〇です。握りますか??などと!分らなければ、どの様に食べたらオススメか聞くことです。私もしばしば聞きます。
そして、これらをふまえて予約するときには大まかな予算を聞くことをお勧めします。

2-3.香りはNG

お店では香水など臭いが強い物を身につけるのはお勧めできません。店の規模も大きくないので、隣のお客さんにも迷惑ですし、つけても食事の香りを害さない程度にしたいものです

2-4.清潔な服装で

服装はフォーマルでもカジュアルでも構いません。スタイルではなく、清潔な服装で行くことをお勧めします。

2-5.箸でも素手でもOK

お寿司は素手で食べても、箸で食べてもOKです。でも煮詰め(アナゴやハマグリ)のネタは箸がおすすめです。手がよごれないので!

2-6.醤油は自分でつけない

一般的にこれらのお寿司屋さんでは、すべて煮切り醤油や塩などをネタに合わせてつけて出してくれます。自分で醤油をつける必要は、あまりありません。※巻物は醤油をつけて食します。

余談ですが、軍艦巻きなどは、しばしば醤油皿に軍艦巻きを置いて醤油をつけている人を見ます。これでは醤油がしゃりに浸透しすぎます。この場合はガリに醤油をつけて軽くネタの上から醤油をたたいてつける様にしてください。

2-7.『あがり』は使わない

今ではよく知られていることですが、符牒(ふちょう-あいことば)は使わないようにしてください。
例えば、‘あがり=お茶’ “おあいそ=お勘定”‘ “むらさき=醤油”などです。これらはお店の内部で使う用語ですので、お茶がほしいときは、お茶ください! 会計するときは、おあいそではなく、お会計!と素直に伝えてください。

2-8.写真はお店に確認をとる

最高のお寿司屋さんに行けば、当然記録に残したいものです。ほとんどのお店は写真OKです。ただし板場に向けての写真はNGのところが多いです。出された食材などや友人・家族との記念撮影などはもちろんOKだと思います。お店によりますが、職人さんの写真、板場はNGです。また小さなお子さんをお連れになる場合は、事前にお店に確認をとることをお勧めします。

2-9.椀物がでたらお会計の合図

お寿司屋さんでの会食は2時間~2時間半程度です。お酒が進んでも、後のお客さんがいれば〆られる可能性もあります。その場合は気分を害さないように。私の経験では、先に時間帯を言われる場合もありますし、または後が控えていると、お椀物がでてきて、お会計をされるケースが多いです。お椀物がでる頃は、そろそろ退席時間が近いですよ!という合図なのでしょうね。

2-10.職人は親方と呼ぶ

意外と呼びにくいものですよね。バーやレストランならマスターさんとか店長さんとか、と呼びますが、お寿司屋さんではよく常連さんは、大将!とか親方!と呼んでいます。
カウンター越しに直接注文をしたり、お話しをするのですから意外と知らないと、なんと呼べば良いのか迷いますよね。迷ったら“親方!”と呼べば問題ないと思います。スムーズなコニュニケーションが図られる事でしょう。

いかがでしたでしょうか。思いつくところをまとめてみました。ぜひ皆さんの参考してください。

3.高級寿司店が高い理由

さて、高級寿司店に行くには一体いくら必要なのか、とても不安ですよね!比較的近所のお寿司屋さんに行き、上にぎりと軽くビールを飲むとおおむね予算は3000円程度です。もちろん一人当たりの金額です。しかし銀座界隈の高級寿司店では20000円~30000円がおおよその相場です。これに飲み物が入ると25000円~40000円程度になります。
この違いは何か?それはネタの仕入れ・ネタ仕込み・シャリの仕込みなど、すべてに手間暇をかけているのはいうまでもありません。

3-1.仕込の技術が高い

ネタに関していえばマグロにしても、大きければいいというわけではありません。よく年始に数千万でマグロをセリで落とすニュースが流れます。大きさだけは一番ですが、味は5番手くらいだとか!?本当の一番味のマグロは銀座界隈の名店が買い付けているそうです。当然値段の差はネタの差になり、お客さんに出すまでの仕込みの手間と技の差になるのです。

ネタの熟成

特にマグロなどの主要のネタは、季節によって産地を選び、大きさも寿司に合う150キロから200キロのマグロを選定し(お店の趣向と時季で大きさは違います)、氷温でしばらく寝かして味が最高になる最適な時期を待ちます。

また白身魚もその魚ごとに氷温で寝かす場合と、そのまま鮮度のあるうちに出す場合と、職人さんの目で見極めて出します。


※昔ながらの氷温で保存する冷蔵庫。今ではほとんどお目にかかれませんね。
引用:(株)アサクラ

香りつけも重要な技

カツオなどは時季になれば、お店で藁でいぶした後に握ってくれます。また後程紹介している青空(はるたか)さんなどは、目利きが難しいカツオは20匹程度さばいて、よい物のみ仕入れるという徹底ぶりです。


引用:企業組合宇佐もん工房

ネタに合わせた丁寧な仕事

白身で油が比較的少ない魚(スズキ、ヒラメ、あまだい)などは昆布〆をして昆布の旨味を魚に移して握ります、この昆布も各店ではシャリと魚にあわせた昆布を厳選しているようです。またこぶ締めにより身の水分を飛ばし、素材の旨味を引き出す目的にも使われます。

仕込みの極致 大トロのはがし

マグロの人気の大トロにおいても、大トロの筋と筋の間を切り取って握る(おおとろのはがし)など、高度な技術を要さないとできない握りも、名店でしか味わえない一品です。

食感へのこだわり

大好きな穴子!穴子を柔らかくに出し、握る前に炙る。この炙り方にしても店で違います。笹の葉の上で焼き、こげ目をつけない焼き方、逆に直に焼いて焦げ目をつけ香ばしさを出している焼き方、そしてそれにつけるたれ(煮詰め)もお店ですべて違うため、いろんな味が堪能できるのです。口に入れるととけてしまう穴子。職人さんの技が光ります。


※穴子の型崩れを防ぐため竹籠に入れて煮込みます。

お店独自の玉子焼き

〆に食べるのは玉子ですが、芝エビを練って入れ込んだ江戸前の卵焼きはまるでカステラをさらに濃厚で柔らかくした食感で、そこでしか食すことができません。江戸前寿司では玉子を焼くだけの専門の職人さんもいるそうです。

ネタの温度管理

お寿司を握る職人さんをみていると、ネタを取り出し、板の上でしばらく置いているのをよく見ます。これはネタの温度管理なんですね。シャリの温度管理、ネタの温度管理、これらをきちんと見極めて握る!これが一味も二味も違う握りになるのです。機械ではできない職人さんの勘ですね。

結果、すべてのネタに深い旨味があります。出てくる寿司は、甘さや酸味が加わり、それぞれの食感や香りを楽しむことができます。

3-2.シャリへのこだわり

高級寿司店はすべて、お米やお酢にもこだわりぬいています。産地はもちろんの事、お酢に関しては赤酢・米酢・ブレンド酢などをネタごとに使い分ける工夫もお店によっては細かく使い分けます。

お寿司においてはネタとシャリとのバランスを欠くことができません。その点からネタとシャリ(酢飯)との相性も気にかけて食べると、よりお寿司の世界が広がります。

例えばあっさり系のネタには米酢を使い、トロや油の強いネタには酢が強めの赤酢を使う店もありますし、酢は分けなくても、シャリの温度を人肌に保ち、こまめにお櫃にシャリをその都度追加して握っているお店もあります。どちらがいいかではなく、お店の趣向の問題ですかね!

ちなみに、お櫃(おひつ)を保温するのに藁で編んだ【わらいずみ】を使用している店もあります。天然の保温機なんですね


引用:藤倉商店

お寿司にとって、ネタとシャリのバランスはとても重要であり、一つが秀でていても味を損なう繊細な食べ物です。それぞれの素材を最高の味に高め、プロデュースする技は職人技と呼ばれる所以であり、完成品の数々は作品と呼ばれる域に高められるのです。

このように、素材の旨さを極限まで引き出す、その技術はどこでも体験できるものではありません。さらに、手の込んだ器の数々や、普段は手に入らない日本酒なども加えられ、お店の空間も楽しめるのが名店たる所以だと思います。

4.銀座で一度は訪れたい高級寿司

数ある名店のお寿司屋さん!一体どの店に行けばいいのでしょう?

お寿司の楽しみ方やマナーを説明させていただきましたが、ではどこに行けばいいのか!数多ある店で一体何を基準に店を選べばいいのか??とても大切なことです。ここでは特に有名な江戸前寿司の名店を中心に紹介していきます。もちろん地方にもおいしいお店はありますが、今回は認知度も高く高級店が一番多い銀座界隈の高級寿司の名店について案内してまいります。

お寿司は当然学校で勉強して簡単に握れるものではありません。そこで師弟関係が重要視される職人の世界ならではの、暖簾分けをされています。どの店もすべて名店と呼ばれ、予約が取りづらい店としても有名です。そこには日常で体験できない味世界がきっとあることでしょう!

4-1.すきやばし次郎系―すきやばし次郎本店

ジョエル・ロブションやフェラン・アドリアなど世界最高ランクの料理人に支持されている伝説の職人小野次郎氏を筆頭にする系統のお店です。世界最高ランクの料理人の二人が次郎氏をゴッドハンドと崇めている点において寿司の世界ではその評価は突出しています。

    4-2.かねさか系-銀座かねさか本店

    主人金坂真次氏は久兵衛で修業して銀座にかねさかを開業しました。 久兵衛の特徴は北大路魯山人の焼き物など一流の器を使っている点にあるのですが、かねさかも久兵衛の影響かわかりませんが、魯山人の器を使うなど徹底的に一流にこだわるポリシーを持っています。

    かねさかは赤酢(3年熟成)を使ったシャリが特徴で、温度管理を徹底させるためにシャリを頻繁に交換します。ネタとシャリの一体感を追及するのは名店に共通していますが、ネタをシャリの温度に合わせるケースもあるくらい温度にこだわっているのが特筆すべき点です。

      4-3.すし匠系(すししょう)-すし匠本店 

      中澤圭二親分のお店です。すし匠の特徴はネタの熟成にありますが、光り物は鮮度を追及しているそうです。(すし匠斎藤談)また、つまみを追及している点では他の店と一線を画しています。そのために握りのシャリは少し小さめなものが多いです。握りとつまみが交互に出てくるスタイルも特徴ですが、賛否あります。

      ちなみに批判の論旨は、つまみが旨いと酒が進んでしまい、口の中に酒の甘みが残っている状態で 握りを口に入れるとせっかくの風味が損なわれてしまうというものです。 シャリは赤酢と米酢を使い分けています。 淡白な魚は米酢、トロやシメものなどは赤酢を使うようです。 

      4-4.久兵衛系-久兵衛本店

      北大路魯山人や志賀直哉、吉田茂に支持された名店で、テレビなどメディアへの露出が多く観光向けに展開しているため寿司マニアには評判がよくありません。しかし一流であることへのこだわりは群を抜いており、魯山人の焼き物など超高額の器が使われています。

       握りは一口で食べられるサイズというポリシーがあり小さめです。甘みは砂糖を使わずに素材から引き出すといったポリシーがあるので、シャリは米の甘みのみのために甘みの物足りなさを感じるお客も多いです。ガリの酢にも砂糖が入っていないのでかなり辛いと思います。 久兵衛の名物はあなごです。塩と煮詰めで出されます。そして芝海老がたくさん入った卵焼きは伊達巻の様な繊細さで味わい深いのが特徴です。因みに、軍艦巻きは久兵衛が開発したと言われています。

      これらのお店の大半は銀座付近に拠点を構えており、銀座が日本の寿司の聖地とも呼ばれる所以です。この系統以外にも有名な名店と呼ばれるお寿司屋さんはあります

      など、どれも素晴らしいお寿司屋さんです。例えば美家古寿司は江戸前寿司の伝統を脈々と伝える最古参のお寿司屋さんです。創業は慶応年間ですから、すごい!の一言。与志乃はすきやばし次郎、鮨水谷(引退)さんなどが修行した名店です。

      このように知れば知るほど、東京のお寿司屋さんの世界は興味がわき、奥が深いのだと感じてしまいますね!

      5.最後に

      簡単ではありますが、私の経験値から高級寿司店の内容をまとめてみました。少しでも参考にしていただければと思います。そして興味が湧かれましたら、ぜひ足を運んでみてください。私も看板もメニューも何もない寿司屋を知人に連れられて初めて訪問した日の事をいまでも覚えております。

      何から注文すればいいのか?どれくらいお金がかかるのか?写真とってもいいの?職人さんを何と呼べばいいの?さまざまな不安が頭をよぎりました。でも一流は食だけではありませんでした。お店の対応も素晴らしいものでした。わからないならわからないなりに丁寧に説明してくれ、気さくなまでの接客はまた行きたくなるようなお店ばかりでした。

      皆さんもお客さんとして、気楽に名店と呼ばれる高級寿司店に行ってみてください。きっと記憶に残る時間になる事を願い、私の紹介を終わりにさせていただきます。