日中に烏龍茶を飲むと睡眠時の脂肪燃焼が促進された研究報告があるって、ウソ?ホント?

アカシアの樹QAシリーズ~健康に関する「ウワサの真相」~

16回 烏龍茶と脂肪燃焼に関するウワサの真相

2023831日本ポリフェノール学会第16回学術集会つくば国際会議場で開催されました。今年度のポリフェノール学会はシンポジウムや特別講演を合わせると口頭での講演は6演題の発表が行われました。また、ポスターでの発表は25演題の発表が行われました。

今回から3回は、この中のいくつかの演題を中心に紹介、解説したいと思います。

日中に烏龍茶を飲むと睡眠時の脂肪燃焼が促進された研究報告があるって、ウソ?ホント?

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→ホント(信頼性★★★★☆): これは筑波大学の研究チームが中心となりメタボリックチャンバーという最新施設を使った研究成果です。主な研究成果としては日中に烏龍茶を飲むと睡眠時の脂肪燃焼が1.2倍になるというデータが報告されました。

1.  烏龍茶に含まれる特有の重合したポリフェノール

烏龍茶はお茶の品種名ではなく、半発酵という作り方で作られたお茶の種類の1つです。この半発酵という反応はいわゆる微生物による発酵とは異なり、お茶業界で使われている言葉です詳しくはこちら

お茶にはポリフェノールオキシダーゼという酵素が含まれており、この酵素とポリフェノールが反応すると、酸化が開始されます。この過程によりウーロンテアニンなど烏龍茶特有の重合したポリフェノールが産まれます。(1

2. メタボリックチャンバーという最新施設を使って研究

メタボリックチャンバーとは密閉室と最新機器を組み合わせた施設で酸素摂取と二酸化炭素生産から、エネルギー消費量や体内で燃焼している脂質や炭水化物を測定することができます。日常と同じような生活が送れるように、ホテルのー室のような設備が備えられているそうです。呼気を採取するためのマスクを必要としないためより自然な環境で長時間での測定ができます。そのため、食事中、睡眠時も含めた継時的なエネルギー代謝測定ができるというメリットがあります。(2, 3)

3.  烏龍茶と脂肪燃焼についての研究を解説

筑波大学のチームの研究ではこのメタボリックチャンバーを用いて烏龍茶の摂取効果について研究しています。方法としては、健常男性12名を被験者とし烏龍茶(カフェイン51.8 ㎎、重合ポリフェノール62.3 mg、カテキン類48.5 mg、没食子酸 10.7㎎、(市販烏龍茶350 ml相当))、カフェイン(51.8 mg)のみ、およびプラセボ飲料、の3種類について、毎日それぞれを朝食と昼食時に2週間、12回摂取してもらいました。その後、2週間目に睡眠と1日のエネルギー代謝を測定しました。(4, 5)

その結果、1日を通して烏龍茶、カフェイン摂取群はプラセボ群に比べて脂肪燃焼効果が促進されていました。興味深いことに脂肪燃焼促進効果は烏龍茶群の方がカフェイン群よりも高くいこと、そして睡眠時においてこの効果が顕著であることが明らかとなりました。

この時、烏龍茶、カフェイン摂取群においても睡眠時の阻害効果は見られませんでした。

研究チームはこの結果を受けて烏龍茶に含まれるカフェイン以外の成分の代謝調節作用について重要性を考察しており、重合ポリフェノール、カテキン類や没食子酸の代謝調節作用について更なる解析が必要であるとディスカッションしています。(4, 5

4.まとめ

今回は2023831に行われた日本ポリフェノール学会の演題に関する研究を紹介しました。メタボリックチャンバーという最新施設を使った研究で日中に烏龍茶を飲むと睡眠時の脂肪燃焼が促進されたという研究結果が出ています。この研究では最新施設の活用により一日の代謝の影響を計測することができるようになったため、睡眠時の烏龍茶の影響が観察できたというところが興味深いです。科学技術の進歩によって今まで解明できていなかったポリフェノールの新しい効果や発見につながっていることが面白いですね。

1.廣瀬紗弓, & 柳瀬笑子. (2018). 食品加工中におけるポリフェノールの化学変化 ウーロン茶ポリフェノールの解明を目指して. 化学と生物, 56(10), 665-670.

2.徳山薫平 (2019). < 総説> 日本にヒューマン・カロリメーターができて 20 . 筑波大学体育系紀要, 42, 13-19.

3.花王ヘルスケアレポート15 2007

4.徳山薫平(2023).日中に烏龍茶を飲むと睡眠時の脂肪燃焼が促進された:ポリフェノール研究者に期待すること. 日本ポリフェノール学会第16回学術集会要旨集.

5.Zhang, S., Takano, J., Murayama, N., Tominaga, M., Abe, T., Park, I., … & Tokuyama, K. (2020). Subacute ingestion of caffeine and oolong tea increases fat oxidation without affecting energy expenditure and sleep architecture: A randomized, placebo-controlled, double-blinded cross-over trial. Nutrients, 12(12), 3671.