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「コーヒーを飲むと2型糖尿病が治る」ってウソ?ホント?

「コーヒーを飲むと2型糖尿病が治る」ってウソ?ホント?

2.「コーヒーを飲むと2型糖尿病が治る」ってウソ?ホント? 

(質問に対するアンサーについてはアカシアの樹公式ツイッターにてアンケート形式で投票できます。コチラから。)

ウソ:コーヒーに2型糖尿病の「治療効果」は報告されていません。一方で、大規模な追跡調査や細胞、動物を用いた実験など様々な角度からの研究から「2型糖尿病に対するリスク低減の効果には有効」という報告がされています(信憑性★★★★☆)。

今回はコーヒーを長期的に摂取したらどうなるかという慢性的な効果について答えてみましょう。

慢性的な健康への影響については被験者のコーヒー摂取を長期間コントロールする必要があり、簡単にヒトの介入実験を実施することは難しくなります。そこで疫学的な調査が重要な研究手法となります。この研究方法は、集団を対象として、病気の頻度などに対する影響因子(例えばコーヒーを飲んでいるか、いないか、など)を統計学的に解析し研究します。

コーヒーと2型糖尿病に関する初めての研究はオランダの追跡調査です(1)。この研究では、無作為に選ばれた 2 つの都市の住民を 7 年間追跡してコーヒー消費量と健康状態を調べており、コーヒーを一日 7 杯以上摂取する人は、一日 2 杯以下の人と比べて2 型糖尿病発症リスクが半減していたという結果を報告しています。この研究を皮切りに多くの疫学調査が実施され2型糖尿病とコーヒーの関係が明らかとなってきました。大石ら(2013)では世界11か国、28報の論文データをまとめて2型糖尿病に関する予防効果について考察を行っています。大石らの考察でもコーヒーを全く摂取しない人と比べると,一日 6 杯以上摂取する人の2型糖尿病の発症リスクは約 40 %減少し、一日 1 杯でもリスクは 4 %減少していると報告しています(2)。また、国立がん研究センターなどが行った、日本人を対象とした最新の研究においても、日常的にコーヒーを飲む習慣と空腹時血糖値の低下に有意な関連がみられたと報告しています(3)。

ではなぜコーヒーは2型糖尿病のリスク低減に効果があるのでしょうか。

2 型糖尿病発症リスクとデカフェコーヒー(カフェインの少ないコーヒー)の効果を検討した研究では、デカフェコーヒーの摂取量が一日 34 杯の人は全く摂取しない人に比べて 2 型糖尿病発症リスクが約 3 分の 1 減少したと報告しています(4)。つまりこの結果はコーヒーの成分のうちカフェイン以外の成分が2型糖尿病のリスク低減に関与していると推察することができます。そこで最近注目が集まっているのがコーヒーのもう一つの関与成分ポリフェノールです。ポリフェノールとは複数のフェノール性ヒドロキシ基を分子内に持つ植物成分の総称で、自然界には8000種類以上ありその機能も様々です(5)。コーヒーポリフェノールに含まれる成分で最も多いのはクロロゲン酸というポリフェノールです(図1)。

図 1 クロロゲン酸の構造式
コーヒーに含まれる主要なポリフェノール、クロロゲン酸の化学構造式

 

糖尿病の約90%を占める2型糖尿病。その誘因の一つにインスリンの分泌不全があります。インスリンは膵臓ランゲルハンス島のβ細胞で作られ、血糖値を一定に保つ働きがあります。そのため、インスリン分泌を担うこの細胞が減ったり、機能しないと血糖値のコントロールができず糖尿病の発症につながることが知られています。

Kawada et al., (2017) ではインスリンとクロロゲン酸の関係を明らかにするため、ヒトのインスリン分泌細胞にクロロゲン酸を処理し遺伝子発現などを解析する実験を行いました。その結果、クロロゲン酸にはインスリンシグナルの活性化に重要な遺伝子の発現増加が認められました。またストレスを受けて弱った膵臓のβ細胞を回復させる可能性があることも実験でわかってきました。細胞レベルでの研究ではありますが、クロロゲン酸には膵臓のβ細胞を保護する効果をもつ可能性があると考えられています。(6)

 

  1. van Dam RM, Feskens EJ. Coffee consumption and risk of type 2 diabetes mellitus. Lancet. 360:1477-1478 (2002).
  2. 大石剛子, 福島洋一, 大橋靖雄. 4. 嗜好飲料の糖尿病発症予防効果コーヒーや緑茶摂取に関する疫学研究からの考察―. 糖尿病 56: 913-918 (2013).
  3. Kabeya Y, Goto A, Kato M, Takahashi Y, Isogawa A, Matsushita Y, Mizoue T, Inoue M, Sawada N, Kadowaki T, Tsugane S, Noda M. Cross-sectional associations between the types/amounts of beverages consumed and the glycemia status: The Japan Public Health Center-based Prospective Diabetes study. Metabol Open. 20;14:100185 (2022).
  4. Huxley R, Lee CM, Barzi F, Timmermeister L, Czernichow S, Perkovic V, Grobbee DE, Batty D, Woodward M. Coffee, decaffeinated coffee, and tea consumption in relation to incident type 2 diabetes mellitus: a systematic review with meta-analysis. Arch Intern Med. 169:2053-2063 (2009).
  5. Haslam, E. Practical polyphenolics: from structure to molecular recognition and physiological action. Cambridge University Press (1998).
  6. Kawada Y, Asahara S, Sugiura Y, Sato A, Furubayashi A, Kawamura M, Bartolome A, Terashi-Suzuki E, Takai T, Koyanagi-Kimura M, Matsuda T, Hashimoto N, Kido Y. Histone deacetylase regulates insulin signaling via two pathways in pancreatic β cells. PLoS One. 12:e0184435 (2017).