11月26日はポリフェノールの日って、ウソ?ホント?

これまでアカシアの樹QAでは健康に関する「ウワサの真相」を科学的な観点からのウソ、ホントについて書いてきました。今回は少し志向を変えてお届けします。アカシアの樹ではポリフェノールについて勉強するため毎年ポリフェノール学会に参加しています。今回から数回はあらためてポリフェノールのことを知って頂こうと思い、ポリフェノール全般の情報についてと先日8/26に開催された第15回ポリフェノール学会についてのレポートをこのウワサの真相のコーナーでお伝えしたいと思います。

「11月26日はポリフェノールの日」って、ウソ?ホント?

(質問に対するアンサーについてはアカシアの樹公式ツイッターにてアンケート形式で投票できます。コチラから。)

ホント(信頼性★★★★★):日本ポリフェノール学会ではポリフェノールのことをより良く知り、毎日の食生活に活かしていただきたいとの考えから2020 年より11 26 日を「ポリフェノールの日」に制定しました。

1.   11月26日はポリフェノールの日


現在の日本では社会の超高齢化が進むにつれて「健康寿命」の延伸が課題となっています。健康寿命とは日常生活を制限されず健康に生活できる期間のことで、この期間が長いほど健やかな人生と言えるかと思います。また、近年の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い「新しい生活様式」への転換が提唱されるなど、現代社会では自分自身が病気やケガをせず、いかに健康を維持できるかというセルフケア意識が急速に高まっています。そうした中で、ポリフェノール学会ではポリフェノールのことをより良く知り、毎日の食生活に活かしていただきたいという考えから「ポリフェノールの日」を制定しています。日付は「いい【11】ポリフェ【2】ノール【6】」とよむゴロ合わせから11 月 26 日を「ポリフェノールの日」としています。2020年からこのポリフェノールの日は日本記念日協会により認定、登録されました。(1)

2.  知っているようで知らないポリフェノールのことについて

ポリフェノールと聞くとなんとなく健康に良いイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。聞き馴染みのあるポリフェノールという言葉ですがその成分についてきちんと知っている人は少ないのかもしれません。ポリフェノールの名前はポリ(複数の)フェノール(ベンゼン環にOH基がついた)成分という意味に由来しています(図1)。

      

ポリフェノールとは単一の成分の名称ではなく複数の成分の総称です。そのため、ひと言でポリフェノールといっても自然界には5000-8000種類のポリフェノールがあるといわれています。その種類は構造の特徴からいくつかのグループに分類されます(図2)。

お茶に含まれるカテキン類(フラバノール)、コーヒーに含まれるクロロゲン酸、ワインに含まれるアントシアニン、大豆のイソフラボン、タマネギのケルセチンそしてアカシアの樹皮に含まれるプロアントシアニジン、これらすべてがポリフェノールの仲間です。ポリフェノールが特定の一つの物質を指す言葉ではないことは先日放送された(2022年11月11日)NHK番組「チコちゃんに叱られる」でもとりあげられました。もし再放送などがあればみてみてください

3.  植物が作り出す天然成分、動物では作り出せないポリフェノール

ポリフェノールは植物によって作られます。ヒトはもちろん他の動物ではポリフェノールを作り出すことはできません。植物は水、二酸化炭素と光エネルギーを使い酸素とグルコースを作り出します。この反応を光合成と呼びますが、植物はこの光合成の副産物(二次代謝産物と呼びます)を利用して様々な成分を作り出します。この二次代謝産物の1種にポリフェノールがあります。先ほどポリフェノールの種類はたくさんあると述べましたがその機能も種類によって異なります。しかし、ポリフェノール成分の共通した特徴は抗酸化力があるということです。植物はポリフェノールのもつ抗酸化力を利用して自らの生命を守ることに役立てています。

4. 植物はどうしてポリフェノールをつくるのか
4-1. 植物のもつ巧みな生存戦略

植物は動物とは異なり移動することができません。外敵が来たからといって走って逃げることも、暑いからと言って日陰に移動することもできません。一度地上に根を張るとその場所で一生を終えることになります。そのため植物は外的環境に影響されず生き抜くため、「防御の知恵」を進化させてきました。その戦術の一つが抗酸化力の高いポリフェノールを作り出すことだったのです。さてここでいつものウワサの真相Q&Aのように科学論文をひとつ紹介します。今回はヒトの健康に関わるものではありませんがぜひお付き合いください。

4-2. 紫外線から植物を守るポリフェノール「サイギノール」

2016年に千葉大学、ドイツのマックスプランクの共同研究では「有害な紫外線から植物のカラダを守る物質とこの物質を作るための遺伝子」を発見し報告しています(2)。前途のように植物は移動することができず、そして光合成を行うために常に日光にさらされています。日光に含まれる紫外線は細胞や細胞中のDNA やタンパク質にダメージを与えます(3, 4)。そのため、植物は紫外線から身を守る必要があります。研究チームはこの紫外線から身を守る物質としてフラボノイド(ポリフェノールの中のグループ 図2)類の仲間が関与することを発見しました。研究チームは発見した新規フラボノイドをサイギノールと命名しました(図3)。

これはこの新規物質がこれまで知られていたフラボノイド類より紫外線を遮る機能が高いことに由来し、「遮る(さえぎる)」の古形「遮る(さいぎる)」という言葉か らsaiginol(サイギノール)と名前をつけました。さらに研究チームはサイギノールを作るにはFTP2という遺伝子が必要であることを突き止めています。

このようにポリフェノールには紫外線による活性酸素を除去する効果や紫外線そのものを吸収し防御する働きがあります。他にも昆虫などの消化酵素の働きを抑える効果により害虫から身を守る効果にも役立つポリフェノールも存在します。

5. アカシア樹皮に含まれる複雑で珍しいポリフェノール

最後にアカシア樹皮ポリフェノールについてもあらためて紹介したいと思います。

先ほど紹介した論文では紫外線を遮る物質としてポリフェノールがあり、その中のフラボノイド類の一つにサイギノールという成分があるという話でした。アカシア樹皮ポリフェノールにも様々なポリフェノールが含まれています。主要な成分はプロアントシアニジンというポリフェノールであるということがわかっています。特徴としてはポリフェノールが複数くっついている構造をとること(重合)。構造的にはフラバノール類の中のB環に3つのヒドロキシル基があること、A環5位のヒドロキシル基がつかない構造をとる少し珍しいカタチをしています(図4)。

少し難しい話になってしまいましたが、お伝えしたいことは「アカシア樹皮に含まれるポリフェノールは自然界の中にたくさんあるポリフェノールの中でも複雑で珍しい構造をしている」ということです。アカシア樹皮に含まれるポリフェノールの構造に関する研究はこれまで国内の大学と共同研究を行っており、多くの新規ポリフェノールが見つかってきました(5,6)。この研究は現在も継続中で今後も新しいポリフェノールの発見が期待されます。

まとめ

さて今回は1126日のポリフェノールの日に因んでポリフェノール全般のことを改めて書いてみました。ポリフェノールは植物にしか合成できない成分です。植物は自然界で生き抜くため50008000種類という多様なポリフェノールを作り出し、その機能も様々です。数多くあるポリフェノールの中でもアカシア樹皮抽出物には複雑で珍しい構造をとるポリフェノールが含まれています。次回は今年のポリフェノール学会の様子をお伝えします。

  1. ポリフェノール学会ホームページ
  2.  Tohge T, Wendenburg R, Ishihara H, Nakabayashi R, Watanabe M, Sulpice R, Hoefgen R, Takayama H, Saito K, Stitt M, Fernie AR. Characterization of a recently evolved flavonol-phenylacyltransferase gene provides signatures of natural light selection in Brassicaceae. Nat Commun. 7:12399.2016
  3.  Foyer CH, Lescure JC, Lefebvre C, Morot-Gaudry JF, Vincentz M, Vaucheret H. Adaptations of photosynthetic electron-transport, carbon assimilation, and carbon partitioning in transgenic Nicotiana plumbaginifolia plants to changes in nitrate reductase-activity. Plant Physiol. 104, 171–178 (1994).
  4.  Ries G, Heller W, Puchta H, Sandermann H, Seidlitz HK, Hohn B. Elevated UV-B radiation reduces genome stability in plants. Nature 406, 98–101 (2000).
  5.  Kusano R, Ogawa S, Matsuo Y, Tanaka T, Yazaki Y, Kouno I. α-Amylase and lipase inhibitory activity and structural characterization of acacia bark proanthocyanidins. J Nat. Prod. 74:119-128 (2010)
  6. Matsuo Y, Kusano R, Ogawa S, Yazaki Y, Tanaka T. Characterization of the α-Amylase Inhibitory Activity of Oligomeric Proanthocyanidins from Acacia mearnsii Bark Extract. Nat Prod Commun.  11:1851-1854 (2016).