近年のスマートウォッチはさまざまな機能を搭載しており、心拍数や血圧などの健康に関わる部分も測定できる商品が多数登場しています。
しかし、血糖値についてはスマートウォッチの測定機能を参考にすると、正確な数値を測れていない可能性があります。
この記事では、スマートウォッチにおける血糖値の測定機能や病院以外で血糖値を測定する方法などをまとめました。
この記事でわかること
- スマートウォッチの血糖値測定機能に関する情報
- スマートウォッチ以外で血糖値を測定する方法
- 血糖値の測定基準
高血圧や糖尿病が気になる人で、病院以外での血糖値の測定方法に悩んでいる場合は、参考にしてください。
目次
スマートウォッチでは正確な血糖値やグルコース値を測定できない
結論からいうと、スマートウォッチの機能を利用した血糖値の測定は推奨されません。
一般社団法人の日本糖尿病学会では、血糖値を測定できるとするスマートウォッチに対して、以下の報告を出しています。
-
- 米国食品医薬品局(FDA)は皮膚への穿刺をせずに血糖測定できるとうたうスマートウォッチやスマートリングを使用しないよう警告(2024年2月21日時点)
- 指先穿刺や皮下センサー留置のための皮膚穿刺なしで血糖値やグルコース値を測定できる医療機器はない(2024年4月時点)
血糖値やグルコース値を正確に測定するためには、指先や皮膚を針で刺すのが必須です。
2025年6月時点でも測定に関する状況は変わっていませんが、針を刺す痛みを避けられる点でスマートウォッチを利用する人がいます。
光を利用した血糖値の測定は実用できるほどの正確性がない
スマートウォッチでは機器に内蔵されているLEDレーザーで光を当てて、皮膚内の反射や電気信号から血糖値を分析しています。
光学式センサーと呼ばれる技術であり、血糖値以外にも心拍数や血圧を測定する際に活用される機能です。
しかし、光を利用した測定は心拍数や血圧でも正確な数値を出すのが難しく、血糖値の場合は特に数値のブレが大きくなる可能性があります。
そのため、血糖値を測定できるとするスマートウォッチは、信頼できない商品です。
ネットショップで販売される血糖値測定器の中にも不正な商品がある
スマートウォッチ以外にもネットショップでは、自宅で利用できる血糖値測定器が販売されています。
ただし、血糖値測定器には血液を読み取るセンサーが必須です。
センサーは体外診断用医薬品であり、販売するためには薬局や医薬品専業の許可を受けて、薬剤師が対面して販売する必要があります。
そのため、ネット上でセンサーが付属した血糖値測定器が販売されている場合、不正な商品に該当します。
正確な血糖値を把握できていないと医療機関の受診が遅れる可能性がある
正確な血糖値が測定できていない場合、高血糖や糖尿病の症状が進んでいても気付けない可能性があります。
スマートウォッチ等の正確性がない測定では、血糖値の微量な変化まで表示できません。
徐々に血糖値が上がっていても病院の診断と変わらない数値が表示されていると、血糖値に問題がないと思ってしまいます。
そのため、血糖値の把握や管理をする目的で正確性がない測定器を使用するのは、推奨されないのです。
病院以外にも正規の血糖値測定器やゆびさきセルフ測定室が選択肢になる
正確な血糖値を測定する方法としては、以下の3つがあげられます。
-
- 病院やクリニックでの採血、尿検査
- 簡易自己血糖測定器や持続型血糖測定器をレンタル、もしくは自費購入する
- 薬局に設置されたゆびさきセルフ測定室を利用する
確実性が高いのは病院やクリニックにおける採血であり、尿検査と併せて高血糖や糖尿病の状態を正確に把握できます。
しかし、自宅から病院まで遠い人や病院の雰囲気が苦手な人は、正規の血糖値測定器やゆびさきセルフ測定室も候補に上がります。
病院以外の測定方法を活用しつつ、1年に1回以上は病院で本格的な検査を受けておきましょう。
自宅で血糖値測定器を使う際は採血用の針やセンサーの購入が必要である
正規の血糖値測定器は大きく分けると、以下の2種類があります。
-
- 簡易自己血糖測定器:指先に針を指して血を出し、測定器のセンサーにしみ込ませて測定する
- 持続型血糖測定器:小さい針のあるセンサーを腕に貼り付けたままにして、専用の読み取り機に近づけて一定期間測定する
簡易自己血糖測定器は測定する度に指先穿刺が必要ですが、操作自体は簡単で結果もすぐに出せます。
一方、持続型血糖測定器はセンサーを貼り付けている間は、専用の読み取り機でいつでも測定が可能です。
センサーにある小さな針は刺さったままですが、痛みはほとんどなく、貼り付けたままでも普通の日常生活を送れます。
測定器はレンタルか自費購入の選択肢があり、それぞれ以下の料金がかかります。
測定器 | レンタル | 自費購入 |
---|---|---|
簡易自己血糖測定器 | 本体:基本無料 (採血用の針、センサーは購入) |
採血用の針、センサー:月20回以上の測定で3,500円(350点) 本体:約6,000円 |
持続型血糖測定器 | 読み取り機:基本無料 (センサーは購入) |
センサー:約7,000円 読み取り機:約8,000円 |
※2025年6月時点
採血するための針や血液を読み取るセンサーは使い切りであるため、測定器をレンタルする場合でも購入する必要があります。
一方、測定器本体のレンタルについては、医療機関で基本的に無料で貸し出されています。
ゆびさきセルフ測定室は薬局で自己採血してその場で検査結果がわかる
ゆびさきセルフ測定室は、簡易的に血糖値が測定できる場所であり、主に薬局で利用できます。
薬局での申し込みから測定完了までの流れは、以下のとおりです。
- 薬剤師などの専門家が検査方法や注意事項などを説明する
- 申請書を記入する
- 手指を消毒して専用キットで指先に針を刺す
- 米粒大の血液を出して専用器具で血液を採取する
- 採血した血液を測定器にセット
- 10分程度で分析が終了して結果を確認できる
説明や検査は薬剤師が行いますが、採血と測定器へのセットは利用者自身が行います。
ウエルシア薬局におけるゆびさきセルフ測定室の検査キットの利用料金は、以下のとおりです。
-
- ヘモグロビンA1c測定:1,100円
- 脂質測定(HDL-コレステロール、トリグリセライド、LDL-コレステロール):1,100円
- ヘモグロビンA1c測定 & 脂質測定:1,650円
ほかの薬局でも上記に近い価格で、血糖値測定器を利用できます。
血糖値の状態を一定期間ごとに把握したい人は、測定器のレンタルや購入よりも安く抑えられる測定方法です。
病院での採血や尿検査を定期的に受けて健康状態を把握する
血糖値測定器やゆびさきセルフ測定室は精度の高い測定ができますが、病院の採血に比べると若干精度は落ちます。
そのため、数値に異常がない場合でも、数か月に1回などの定期的な頻度で病院の採血や病検査も受けておくと良いでしょう。
血糖値測定器やゆびさきセルフ測定室で数値の異常が見られた場合、なるべく早く病院で受診してください。
高血糖や糖尿病の予備群は早めに発見して対応すると、症状を改善できる可能性が高まります。
血糖値測定器やゆびさきセルフ測定では空腹時血糖値を表示する
血糖値の状態を把握するのに使われるのは、以下の2つの数値です。
-
- 空腹時血糖値:空腹時における血液中のブドウ糖濃度
- ヘモグロビンA1c(HbA1c):血液中のヘモグロビンに結合したブドウ糖の割合を示した数値
血糖値測定器やゆびさきセルフ測定では、基本的に空腹時血糖値を表示しています。
そのため、自宅や薬局ではなるべく空腹の状態で血糖値を測定しましょう。
ご飯を食べた状態の場合、急激な血糖値上昇により普段の血糖値とは異なる数値が表示されます。
一方、HbA1cは主に病院の検査で参照されており、測定器によっては測れる場合もあります。
空腹時血糖値やヘモグロビンA1cの基準値は、以下のとおりです。
判定 | 空腹時血糖値 | HbA1c |
---|---|---|
正常 | 70~99mg/dL | 〜5.5% |
正常高値血糖 | 100~109mg/dL | 5.6~5.9% |
予備群(境界型) | 110~125mg/dL | 6.0〜6.4% |
糖尿病型 | 126mg/dL~ | 6.5%~ |
※2025年6月時点
危険性があるのは予備群からですが、正常値から急に正常高値血糖になった場合は、何らかの異常が発生しています。
血糖値測定はスマートウォッチ以外の認定を受けた測定器や医療機関で行う
スマートウォッチは血糖値を測定できるとする商品もありますが、光学式センサーを使用した測定では正確な数値は測れません。
正確な血糖値が把握できていない場合、高血糖や糖尿病の進行に気付かず、放置する可能性があります。
病院以外で血糖値の測定をしたい場合は、正規の血糖値測定器や薬局のゆびさきセルフ測定室を利用しましょう。
ただし、血糖値測定器やゆびさきセルフ測定室はあくまで日常的な血糖値を把握する手段です。
より正確な数値を測定して、血糖値を含めた健康状態を把握するために、病院での受診や検査は定期的に行ってください。