健康診断や体型の変化をきっかけに食生活を見直す中で、手軽に栄養を摂取できるプロテインを活用したいと考えている人もいるでしょう。
インターネットやSNSではプロテインが血糖値の改善に効くという情報もあり、血糖値対策としても注目されています。
今回は、プロテインが血糖値に及ぼす影響と糖尿病予防に有効な食事療法について解説します。
- プロテインが血糖値を直接下げるという記載は一次情報にはない
- タンパク質には血糖管理に役立つ特徴がある
- 毎日の食事は栄養バランスとエネルギー量を意識する
- プロテインは糖質量とエネルギー量に注目して選ぶ
- プロテインを飲む最適なタイミングは目的によって異なる
- 医療機関にプロテインの摂取を相談したほうが良い人もいる
身近な食品で健康維持や血糖管理がしたいと考えている人、加齢に伴う体型の変化や筋肉量の減少が気になっている人はぜひ参考にしてみてください。
一次情報にプロテインが血糖値を直接下げるという記載はない

日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024や厚生労働省のホームページなど、一次情報にプロテインが血糖値を直接下げるという記載はありません。
インターネットやSNS上にはプロテインに関する多くの情報が溢れており、それらは一次情報を他者がまとめた二次情報にあたるため、まとめた人の主観が含まれています。
健康維持や血糖管理をする際は、医学的な根拠に基づいた信憑性の高い情報である一次情報を軸とした情報収集が大切です。
特に個人のブログや口コミは本人の解釈に左右されるため、事実と異なる内容が書かれている場合があります。
食生活におけるタンパク質の補給と血糖値への対策は分けて考える
食生活におけるタンパク質の補給と血糖値への対策は、方法や効果が異なるため、分けて考えましょう。
プロテインは筋肉量の低下が気になり始めた人や運動習慣のある人にとって、食事で不足しているたんぱく質を補給する手段の1つです。
水や牛乳、豆乳などさまざまな飲み物に粉末状のプロテインを混ぜて、手軽に栄養素を摂取できます。
加齢に伴って筋力が低下するサルコペニア対策を目的とする場合は、運動習慣と組み合わせてプロテインを取り入れると効果的です。
一方、血糖値が気になる人は特定の食品に効果を期待するのではなく、食事全体を整える必要があります。
血糖値への効果を期待してプロテインに依存した食生活は、栄養バランスの崩れにつながり、血糖管理に悪影響を及ぼします。
プロテインファーストは飲料に限らずタンパク質を含む食品を最初に食べる
近年インターネットやSNSでは、血糖値対策の1つとしてプロテインファーストという言葉が見られます。
食べる順番は血糖値に影響を及ぼし、同じ食事内容でも食べる順番の工夫で数値が異なります。
タンパク質を多く含む食品には糖質の吸収をおだやかにする働きがあり、食事の最初に食べると血糖値の急上昇を防げます。
タンパク質を多く含む食品の具体例は、以下のとおりです。
- 肉類
- 魚介類
- 卵
- 大豆食品
- 乳製品など
プロテイン飲料のみで血糖値が下がるというわけではなく、タンパク質を含む食品をバランス良く摂取する食事が大切です。
タンパク質を多く含む食品には血糖管理に役立つ特徴がある

タンパク質を多く含む食品には、血糖管理に役立つ以下の特徴があります。
- 糖質の吸収速度を遅らせる
- GLP-1がインスリンの働きを助ける
- 運動時の摂取で筋肉量の増加につながる
タンパク質は20種類のアミノ酸によって構成されていますが、アミノ酸のうち9種類の必須アミノ酸は食事から摂取する必要があります。
ここでは、タンパク質が持つ血糖管理に役立つ特徴について解説します。
糖質の吸収速度を遅らせて血糖値の急上昇を防ぐ作用がある
タンパク質は消化吸収に時間がかかるため、同時に摂取した糖質の吸収速度も遅らせて血糖値の急上昇を防ぐ作用があります。
血糖値の急上昇は血管を損傷させ、動脈が弾力を失って硬くなる動脈硬化を引き起こす要因であり、糖尿病の進行にも影響を与えます。
糖尿病の予防には、血糖値を可能な限り正常範囲に保つ血糖値コントロールが重要です。
食事に含まれる糖質は血糖値を上げる直接的な原因となるため、タンパク質が持つ作用が役立ちます。
タンパク質の摂取で分泌されるGLP-1がインスリンの働きを助ける
血糖値を低下させるにはインスリンというホルモンが必要であり、タンパク質の摂取で分泌されるGLP-1はインスリンの働きを助けます。
GLP-1にはインスリンの分泌を促進させたり、脳の満腹中枢に働きかけて食欲を抑えたりする作用があります。
インスリンは血糖値を調整する働きを持つホルモンであり、糖尿病はインスリンの分泌または効きの不足によって高血糖の状態が続く病気です。
筋肉の材料となり運動時に摂取すると筋肉量の増加につながる

タンパク質は筋肉の材料となり、運動時に摂取するとアミノ酸が効率良く筋肉に運ばれて、筋肉量の増加につながります。
50代以降は筋肉量が急速に減少し、基礎代謝が低下して内臓脂肪の蓄積によるインスリン抵抗性を引き起こす要因となります。
筋肉には糖質を消費したり貯蔵したりする働きがあるため、筋肉量が多いほど糖代謝が改善されて血糖値が安定します。
筋肉量を増やすには、材料となるタンパク質の摂取と、負荷をかけて鍛える運動の両方が必要です。
毎日の食事は食事全体の栄養バランスとエネルギー量を意識する
毎日の食事は、食事全体の栄養バランスと1日のエネルギー量を意識する姿勢が大切です。
糖尿病治療において食事と運動は治療の中心的な役割を果たしており、食事療法と運動療法、必要に応じて薬物療法が推奨されています。
糖尿病診療ガイドライン2024における食事療法の基本は、栄養バランスが取れた食事と適切なエネルギー量の管理です。
主食に主菜や副菜を組み合わせてさまざまな栄養素を摂取する
栄養バランスを整えるには、主食に主菜や副菜を組み合わせてさまざまな栄養素を摂取するように心がけましょう。
体に必要な栄養素には炭水化物とタンパク質、脂質の三大栄養素のほか、ビタミンやミネラルが挙げられます。
厚生労働省は多様な食品の組み合わせによる食事を推奨しており、主食と主菜、副菜を揃えた食事は栄養をバランス良く摂取できます。
そのため、プロテインをはじめとして特定の食品に頼った食事では、栄養バランスの改善は見込めません。
1日に摂取するエネルギー量の適正化が血糖値の安定につながる

食べ過ぎは血糖値の急上昇や慢性的な高血糖を引き起こすため、数値の安定には1日に摂取するエネルギー量の適正化が大切です。
血糖値の乱高下はインスリンの過剰分泌を招き、やがてすい臓が疲弊して糖尿病を発症するリスクが高まります。
さらに、肥満や体重増加による内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性を悪化させ、血糖管理に悪影響を及ぼします。
そのため血糖値の安定には食事の栄養バランスだけでなく、食事量やエネルギー量の調整が重要です。
1日に消費するエネルギー量よりも摂取するエネルギー量のほうが多いと、余ったエネルギーが脂肪として蓄積されます。
食事にプロテインを取り入れる場合は糖質量とエネルギー量に注目する
市販のプロテインには糖質が多く含まれている商品もあるため、食事にプロテインを取り入れる場合は糖質量とエネルギー量に注目して選びます。
糖質量やエネルギー量は、プロテインの容器やパッケージに表示されている栄養成分表示で確認できます。
プロテインにはホエイとソイ、カゼインの3種類がありますが、血糖値が気になる人には糖質が少ないホエイや血糖値の急上昇を抑えられるソイが向いています。
ただし、糖質量やエネルギー量は商品によって異なるため、購入する際の確認が大切です。
ここでは、血糖値が気になる人がプロテインを取り入れる際のポイントについて解説します。
プレーン味やノンフレーバーは糖質量や人工甘味料が少ない傾向がある
プロテインはさまざまな味の商品が販売されていますが、プレーン味やノンフレーバーは糖質量や人工甘味料が少ない傾向にあります。
商品によっても異なりますが、チョコ味やストロベリー味などのフレーバーはプレーン味に比べて人工甘味料が多く含まれています。
プロテインに含まれている人工甘味料の具体例は、以下のとおりです。
- スクラロース
- アスパルテーム
- アセスルファムカリウムなど
人工甘味料は直接血糖値を上げる要因にはなりませんが、強い甘味に慣れてしまうと甘い物への欲求が高まり、結果的に糖質の摂取量が増える原因となります。
そのため、人工甘味料の継続的な摂取は糖尿病の発症リスクを高めます。
1日に摂取するプロテインの量を守って過剰摂取を避ける

毎日の食事にプロテインを取り入れる場合は1日に摂取する量を守り、過剰摂取を避ける心がけが大切です。
タンパク質の摂取は血糖値に良い影響を与えますが、プロテインを多く摂取しても効果が上がるわけではありません。
プロテインにはエネルギーや糖質が含まれているため、過剰摂取は体重や内臓脂肪の増加につながります。
食事とプロテインは別々に考えるのではなく、食事全体の糖質量やエネルギー量と合わせて計算します。
プロテインの摂取量に迷う場合は、医師や管理栄養士などの専門家への相談が推奨されます。
自分に合ったタイミングでプロテインを飲んで効果を高める
プロテインは摂取する目的によって最適なタイミングが異なるため、自分に合った飲み方で効果を高められます。
今回紹介する目的別のプロテインを摂取するタイミングは、以下の3つです。
- 血糖値対策として食前に飲む
- 筋肉量を増やす目的で運動後に飲む
- お菓子の代わりに間食や就寝前に飲む
前述のとおり、タンパク質には血糖値の急上昇を防ぐ作用があり、血糖値が気になる人には食前が適しています。
食事10〜15分前のプロテインの摂取により、後から食べる糖質の吸収速度が遅くなり、血糖値の上昇を抑えられます。
筋肉量を増やしたい人は、筋肉の回復や合成が行われる運動後にプロテインを摂取すると効果的です。
タンパク質が豊富なプロテインは筋肉の材料となり、運動後のタンパク質を補給する役割を果たします。
血糖値への影響が少ないプロテインは、間食や就寝前にお菓子の代わりに取り入れると血糖管理に有効です。
プロテインは自分の好きな時に取り入れられ、目的に合わせたタイミングでさらに効果を高められます。
医療機関にプロテインの摂取を相談したほうが良い人もいる

プロテインにはタンパク質などの栄養素が豊富に含まれていますが、摂取について医療機関に相談したほうが良い人もいます。
以下にあてはまる人は、主治医にプロテインの摂取について確認しましょう。
- 腎臓病や肝臓病などの持病がある
- 現在薬を服用している
- 適切な摂取量がわからない
タンパク質の過剰摂取によって腎臓や肝臓に負担がかかり、持病の悪化を引き起こす恐れがあります。
適切なタンパク質の摂取量は人によって異なり、通常は問題ない量のプロテインでも体の機能が低下している人には負担となります。
現在薬を服用している人はプロテインが効き目に影響を与える可能性があるため、医師や薬剤師への確認が必要です。
他にも適切なプロテインの摂取量がわからない場合は、医師や管理栄養士などの専門家へ相談すると、自分に合う量や取り入れ方などのアドバイスをもらえます。
血糖値が高めと指摘された人、糖尿病の診断を受けた人は、プロテインの摂取が血糖値や体重の管理に悪影響を及ぼす可能性があります。
糖尿病治療では医師や管理栄養士による食事療法の指導が行われ、毎日の食事内容の記録は治療方針を決める資料の1つです。
地道な生活習慣の改善と定期的な検診が糖尿病予防につながる
血糖値を安定させて糖尿病を予防するには、地道な生活習慣の改善と定期的な検診が重要です。
食事や運動などの生活習慣の改善が効果として表れるまでにはある程度時間がかかり、血糖管理は食事療法や運動療法を長期間にわたって継続する必要があります。
治療の成果を確認するには、定期的な検診で血糖値やHbA1cなどの客観的な数値を確認する取り組みも大切です。
特に健康診断をきっかけに食生活の見直しを検討し始めた人にとっては、主観に頼らずに数値で確認する習慣作りが土台になります。
生活習慣の改善と定期的な検診の継続が体の状態の正確な把握につながり、糖尿病の予防や健康維持に役立ちます。
プロテインを食事の補助に賢く取り入れて血糖管理に役立てよう

プロテインにはタンパク質が豊富に含まれており、食事の補助として賢く取り入れると血糖管理に役立ちます。
タンパク質には糖質の吸収速度を遅らせてインスリンの働きを助ける、筋肉の材料となるなど、血糖管理に役立つという特徴があります。
市販のプロテインには糖質が多く含まれている場合があるため、食事に取り入れる際は糖質量とエネルギー量に注目して選びます。
プロテインは飲むタイミングによっても効果が異なり、血糖値対策には食前、筋肉量を増やしたい場合は運動後が最適です。
血糖値への影響が少なく、間食や就寝前にお菓子の代わりに飲む方法もあります。
ただし腎臓病や肝臓病などの持病がある人や現在薬を服用している人は、プロテインが治療に悪影響を与える可能性があり、医療機関への相談が必要です。
プロテインの適切な摂取量がわからない人も、医師や管理栄養士などの専門家への相談が推奨されます。
