年齢を重ねる中で、体調の変化とともに健康診断の血圧の数値が気になり始める女性は少なくありません。
閉経前後の更年期と呼ばれる時期は、女性の身体にとって過渡期となります。
ほてりや動悸といった更年期特有の症状と血圧の変化が重なると、高血圧の原因を自分だけで見分けるのは困難です。
- 更年期症状とエストロゲンの関係
- 家庭血圧を測定する重要性
- 生活習慣の改善による具体的な対策
- 内臓脂肪の蓄積と高血圧の関連性
高血圧は自覚症状が乏しいため、毎日血圧を測定して正確に状態を把握するとともに、必要に応じて早期に医療機関を受診するのが大切です。
更年期以降のさまざまな症状はエストロゲンの減少が関係している
閉経前後の更年期を迎えると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少するため、心身にさまざまな変化があらわれます。
閉経年齢には個人差があり、正確な時期の特定は困難ですが、一般的に閉経と判断されるのは最後の月経から12ヶ月が経過した段階です。
この閉経を挟んだ前後10年間の更年期に、卵巣から分泌されるエストロゲンの分泌量が減少するといわれています。
エストロゲンの分泌が減少し始めると、自律神経のバランスが乱れ、以下のような症状が出現します。
- ホットフラッシュ
- 発汗
- 倦怠感
- 肩こり
- イライラ、不安
- 抑うつ
- 不眠
症状の程度には個人差があり、軽いものから日常生活に支障をきたす更年期障害までさまざまです。
閉経後はエストロゲンの分泌が急激に減少するため、以下のような変化が起こり始めます。
- 血圧の上昇
- 認知機能の低下
- 骨粗しょう症の危険性増大
- 肌の弾力低下
- 悪玉コレステロール上昇
エストロゲンの減少は血圧を上昇させる可能性がある

更年期以降、女性の血圧が高くなる背景には、エストロゲンの分泌量の低下が深く関わっている可能性があります。
更年期前の女性は、血管を広げる働きを持つエストロゲンが十分に分泌されているため、男性に比べて高血圧の発症リスクが低いとされています。
一方で更年期以降の女性の血圧上昇は、エストロゲンの分泌量低下に伴い、血管の収縮や腎臓においてナトリウムの貯留が引き起こされるのが原因です。
この時期の血圧上昇にはエストロゲンの減少だけでなく、加齢そのものによる影響も関わっているため、明確にエストロゲンの減少だけが原因とは言い切れません。
しかし、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、そして虚血性心疾患の罹患率が閉経後に増加するのは確かです。
このように更年期以降の血圧上昇には複数の要因が関わっているため、血圧の上昇が続いたり健康診断で指摘されたりした際は、早期に医療機関を受診する必要があります。
血圧は測定環境で変動するため家庭血圧を測定するのが大切である
健康診断で血圧の高値を指摘された場合でも、、一度の測定結果だけで高血圧と断定されるものではありません。
血圧は運動や食事、ストレスによって常に変動しているほか、医療機関を受診した際の緊張から一時的に数値が高くなる人や反対に下がる人もいます。
そのため診察室で医師が血圧の数値を見比べられるよう、普段から家庭で落ち着いた時に血圧を測定し、手帳などに記録しておくのが望ましいです。
血圧を記録したものがあると、より正確な診断に役立つでしょう。
さらに高血圧を放置すると、自覚症状がないまま動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる病気を発症する危険性があります。
医療機関と自宅の血圧測定は数値に差が出る場合がある

健康診断で血圧が高値となる原因には、測定する環境が深く関係している場合があります。
医療機関と自宅の測定値に差が出る人もおり、診察室だけで血圧が上がる白衣高血圧や自宅で高くなる仮面高血圧といったケースがあります。
環境によって異なる高血圧の種類と特徴は、以下のとおりです。
| 高血圧の種類 | 定義 | 特徴 |
|---|---|---|
| 白衣高血圧 | 未治療にて診察室の血圧が140/90mmHg以上かつ家庭血圧が135/85mmHg未満 24時間自由行動下血圧測定で平均24時間血圧が130/80mmHg未満 |
高齢者に多い 持続性高血圧に移行する可能性あり |
| 仮面高血圧 | 診察室血圧の平均が140/90mmHg未満かつ家庭血圧が135/85mmHg以上 24時間自由行動下血圧測定で130/80mmHg以上 |
早朝高血圧、職場高血圧、夜間高血圧が含まれる 心血管リスクが高い |
医療機関側だけの数値では高血圧を見落とす危険性があるため、普段の生活環境における血圧の測定データは正確な診断に欠かせません。
そのため家庭血圧や24時間自由行動下血圧の測定は、高血圧の診断に役立ち、さらに治療の効果判定などにも有用でしょう。
それぞれの測定方法は、以下のとおりです。
| 種類 | 方法 |
|---|---|
| 家庭血圧 | ・起床時と就寝前に測定する ・夕食前や入浴前など指示がある時や症状出現時に測定する ・座位1〜2分安静後 ・測定回数は1機会1〜3回 ・測定期間は長期間 |
| 24時間自由行動下血圧 | ・片腕に血圧計を巻き、本体を腰に固定する ・昼間は30分間隔、夜間は1時間間隔で血圧が測定される ・測定中は食事や運動などの行動記録を取る ・頭痛などの症状も記載する ・24あるいは48時間装着する |
最高血圧と最低血圧の片方が高い場合でも合併症を招く可能性がある

血圧には最高血圧と最低血圧があり、どちらか一方でも基準値を超えている場合は、脳卒中や心血管障害など命に関わる病気を引き起こす可能性があります。
最高血圧と最低血圧はそれぞれ心臓の動きと連動しており、体内の血管の状態によって数値が上がります。
最高血圧が140mmHg以上または最低血圧が90mmHg以上のどちらか一方、あるいは両方を満たす場合に高血圧と指摘されます。
どちらの数値が高くなるかは年齢や体調の変化が関係しており、その特徴は以下のとおりです。
| 年代 | 特徴 |
|---|---|
| 高齢世代 | 最高血圧が上昇 |
| 若齢世代 | 最低血圧が上昇 |
加齢によって動脈硬化が進行すると最高血圧が上昇し、最低血圧は低下する傾向にあるため、年齢を重ねるほど最高血圧が高くなります。
一方で、若い世代の場合はストレスや自律神経の乱れ、肥満などを招く生活習慣の偏りによって手足などの末梢の血管が収縮するのが最低血圧を高くする要因です。
さらに更年期を迎えた女性もエストロゲンの減少によって血管の柔軟性が落ちたり、自律神経が乱れたりして最低血圧が高くなる傾向があります。
このように、最高血圧と最低血圧のどちらが高くなるかは、血管の柔軟性や自律神経の状態によって異なります。
生活習慣の改善は高血圧に効果的である
血圧が高い場合は、医療機関を受診するとともに、生活習慣の見直しが大切です。
生活習慣の改善は、次のような順番で取り組むと無理なく続けられます。
- 家庭血圧を記録する
- 食事の塩分を見直す
- 睡眠を整える
- 血圧の変化を医師と共有する
高血圧は自覚症状が乏しいものの、放置すると将来的に心疾患や脳血管疾患といった命に関わる病気を引き起こす危険性があります。
さらに女性が更年期を迎える時期は、エストロゲンの減少によって血圧が高くなる場合がありますが、他にも以下のような原因があります。
- 交感神経の過剰な活性化
- 塩分排泄の低下
減塩とカリウム摂取は血圧上昇の抑制に役立つ

塩分を多く摂取する食事は、高血圧を引き起こす原因となるため、減塩に取り組むとともに塩分の排泄を助ける食品を摂取する必要があります。
減塩における1日の目標値は食塩6g未満ですが、外食などをすると簡単にこの基準を超えてしまいます。
さらに、食品の成分表示に記載されているナトリウム量は食塩の量と異なるため、以下の計算式を使用して実際の食塩相当量を把握するのが望ましいです。
- ナトリウム量g×2.5=食塩の量g
具体的な減塩方法としては、加工食品や外食を控える、調味料を大量にかけないといった意識が大切です。
一方で野菜や果物といったカリウムを多く含んだ食品の摂取も、体内に溜まったナトリウムの排泄を促す作用があるため、血圧を下げる効果が期待できます。
カリウムを多く含む食品は、以下のとおりです。
- ほうれん草
- かぼちゃ
- バナナ
- アボカド
- 落花生
- オレンジジュース
適度な運動と適切な睡眠は高血圧を予防するのに効果的である
定期的な運動や睡眠は血圧を下げる効果が期待できるため、普段の生活に取り入れるのが望ましいです。
運動は1日30分程度行い、強度はややきつい程度の有酸素運動が勧められており、これを毎日行うと効果があるとされています。
具体的な運動の種類は、以下のとおりです。
- ウォーキング
- 軽いジョギング
- 水泳
- サイクリング
ただし、会話を続けるのが困難になるなどの高強度の運動は血圧上昇が顕著となるため、会話ができる程度の運動に留める必要があります。
さらに、これまで運動習慣がなかった人は、急に運動を始めると体に負担がかかる場合があります。
そのため、掃除を丁寧に行ったり自転車で買い物に出かけたりなど、日常生活の中で少しずつ体を動かすところから始めてみましょう。
加えて運動の強度は健康状態によっても異なるため、虚血性心疾患などの持病がないかどうかも含め、事前に医師と確認した上で運動習慣を取り入れてください。
一方で、睡眠時間も血圧に影響しており、7時間未満や8時間以上の睡眠は血圧を上げる要因になる可能性が指摘されています。
ホルモンの分泌や自律神経機能に影響を与える可能性があり、高血圧を予防するためにも毎日7〜8時間の睡眠時間を確保するのが大切です。
メタボリックシンドロームは血圧を上げる要因である

更年期の高血圧は、メタボリックシンドロームにも深く関与している可能性があるため、適切な減量に取り組むのが大切です。
メタボリックシンドロームには、以下のような診断基準があります。
- ウエスト周囲径が男性85cm以上、女性90cm以上
- 血圧、血糖、脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れる
メタボリックシンドロームの病態は、内臓脂肪の過剰な蓄積が主な原因です。
内臓脂肪が蓄積されると血糖値を下げるインスリンの働きが弱まり、体は血糖値を下げようとして、インスリンを大量に分泌するようになります。
過剰に分泌されたインスリンには、以下のような作用があります。
- 腎臓からのナトリウムの排泄を抑制する
- 交感神経の働きを活発にする
- 血管壁の細胞を増殖させて血管を細くする
これらはすべて血圧を上げる要因となるため、減量によってメタボリックシンドロームを予防するのが高血圧対策に有効といわれています。
特に更年期を迎えた女性は、エストロゲンの分泌減少に伴い、内臓脂肪が容易に増加するとされています。
そのため、内臓脂肪を減らす必要があり、食事においては糖質の過剰摂取を控えたり脂質を抑えてタンパク質の摂取量を増やしたりするなどの工夫が必要です。
さらに、ウォーキングなど有酸素運動とスクワットをはじめとする筋力トレーニングを組み合わせるのも、高い効果を発揮するといえるでしょう。
症状に合わせて適切な診療科を選び早期に受診するのが望ましい
健康診断で再検査の通知を受け取った場合や、家庭血圧の測定で高い数値が続く時は、医療機関を受診する必要があります。
高血圧の原因が更年期なのか、あるいは動脈硬化の進行など他の疾患からくるものなのかを自分で判断するのは困難です。
医療機関を受診する際は、主となる悩みに合わせて診療科を選択してください。
更年期特有の体調不良が主な悩みの人は婦人科、血圧の数値について相談したい場合は循環器内科の受診が適しています。
どちらか判断できない場合は、かかりつけ医に相談するのが望ましいでしょう。
どの診療科を受診する際も、家庭血圧の記録を持参すると、医師が経過を把握できるため診察がスムーズに進みます。
