健康診断で血圧が高めと指摘されたとき、医師や診断書から運動不足の改善を提案される場合があります。
しかし、運動する習慣がない場合は、具体的にどの程度の運動量や時間が必要かわからない人もいるでしょう。
この記事では、血圧を下げる運動について、公的機関が示す基準や安全に継続する方法などをまとめました。
この記事でわかること
- 有酸素運動は長期的な継続により血圧を下げる効果が期待できる
- 糖尿病や高血糖の人は運動時の血糖値への影響も意識する
- 無理なく有酸素運動を継続できる環境づくりを心がける
- 本格的な運動を始める際は医師などの専門家に相談する
運動不足の改善で血圧を下げようと思っている人は、参考にしてください。
定期的な有酸素運動は血管の抵抗を減らして血圧を下げる

厚生労働省の「高血圧の人を対象にした運動プログラム」によると、定期的な有酸素運動は、血圧を低下させる効果が期待できると示されています。
定期的に有酸素運動を行っている場合、運動時の血液の動きから血管が適度に刺激されて、末梢血管の抵抗が減少します。
血管の抵抗が下がると、心臓が血液を送り出す際の圧力も軽減されるため、血圧の低下につながります。
有酸素運動を継続した場合の具体的な数値の変動は、以下のとおりです。
| 血圧 | 血圧測定時の判定 | 有酸素運動継続時に降圧する期待値 |
|---|---|---|
| 収縮期血圧 | 上の値 | 3〜5mmHg |
| 拡張期血圧 | 下の値 | 2〜3mmHg |
降圧する値が小さいと感じるかもしれませんが、血圧管理では数ミリ単位の減少が将来的な血管系疾患のリスクに影響します。
参照元:厚生労働省「身体活動・運動」
有酸素運動は心臓と肺の働きに作用して心血管疾患の発症リスクを抑制する
定期的な有酸素運動は、心臓の働きに作用して、心血管疾患の発症リスクを抑制する効果も期待できると公的資料で示されています。
定期的な有酸素運動を行っていると心臓の筋肉が強化されて、心臓が一度の心拍で送り出せる血液量が増加します。
一度の心拍で多くの血液を送り出せると、心臓が速く動く必要がなくなり、運動していない安静時も含めて心拍数が下がる傾向があります。
血圧の低下と併せて心臓への負担が減少した結果、心血管疾患の発症リスクも抑制される可能性が高いでしょう。
有酸素運動の血圧を低下させる効果は長期的な継続が前提になる
有酸素運動による血圧の低下は、短期間で目に見えて変化するわけではないため、実践する際は長期的な継続が必要です。
血管に対する抵抗性が減って、安定した降圧効果が定着するには、数週間から数ヶ月の有酸素運動が必要とされています。
血圧は自律神経の働きによっても左右され、特に緊張や興奮状態では交感神経が優位になって、血圧が上昇する傾向があります。
有酸素運動を始める際は、天候やストレスなどの一時的な要因で自律神経が働いて、数値に影響を与える可能性も考慮しておきましょう。
糖尿病や高血糖を併発している場合は血糖管理と血圧対策を両立させる

血圧が高めで糖尿病や高血糖を併発している場合は、血糖管理と血圧対策を両立させられるように意識してください。
定期的な有酸素運動は基本的に血糖値にも良い影響を与えますが、糖尿病の進行度や服薬状況によっては、血糖値を大幅に変動させます。
そのため、血糖管理と血圧管理は独立して取り組むのではなく、両方の影響を考慮しながら連携して取り組む必要があります。
血圧は一般的に販売されている血圧計で比較的簡単に測定できますが、血糖値は基本的に血液検査や一般販売されない機器による測定が必要です。
正確な血糖値を把握するためにも、糖尿病や高血糖の人は、有酸素運動を取り入れる前に担当医の診察を受けましょう。
低血糖のリスクや合併症の状態を考慮しながら自分に最適な運動強度を正確に把握する
糖尿病の患者が運動を行う際に意識する必要がある症状は、過剰な運動による低血糖です。
インスリンや経口血糖降下薬を使用している場合、運動時の体内の糖分消費から、血糖値が予想以上に低下する場合があります。
低血糖の症状にはふらつきや冷や汗、手の震えなどがあり、状態が進むと意識障害を引き起こす危険性もあります。
運動の強度と時間は、現在の血糖コントロールの状態と合併症の進行度によって適切な範囲が異なります。
自分の感覚だけで運動の強度を決めず、主治医に今の自分に適した運動の内容と量を確認しましょう。
著しい高血糖や代謝失調の症状がある場合は運動を控えて医療機関を受診する
高血糖や糖尿病のなかでも、著しい高血糖や代謝失調の症状が見られる場合は、有酸素運動を控えて、医療機関を受診してください。
著しい高血糖や糖尿病性の急性代謝失調では、以下のような症状が発生します。
- 強い口渇
- 尿量や体重の急激な変動
- 倦怠感
- 吐き気
上記の状態のときは、血糖値を下げるインスリンが不足して、血糖値が急上昇している可能性があります。
症状があるなかで運動すると、意識障害や昏睡などの危険を伴うため、無理に運動を始めないようにしましょう。
血圧を下げる効果のために無理なく運動する環境づくりを心がける

有酸素運動で血圧を下げたい場合は、無理なく運動できる環境づくりを心がけてください。
有酸素運動が健康的に良いと理解していても、運動習慣がなかった人や日常生活が忙しい人は、継続が難しい場合があります。
しかし、激しい運動や一定期間に集中した運動だけでは、血圧を下げる効果は得られません。
ネット上でまとめられる血圧を下げるための運動も、発信者個人の体質や体力に沿った内容で、自分で実践する際は合わない可能性があります。
ウォーキングや軽いジョギングを生活に組み込んで血管への適度な刺激を習慣化する
有酸素運動を取り入れる際に、道具や準備に手間をかけたくない場合は、ウォーキングや軽いジョギングから始めてみましょう。
ウォーキングは血圧管理を目的とした有酸素運動の基準として、多くの資料で取り上げられています。
特別な道具や場所を必要とせず、年齢や体力に関わらず比較的簡単に始められる点が利点とされています。
歩くペースは、隣を歩く人と普通に話せる程度を目安とし、息が上がりすぎない強度が適切です。
ウォーキングに慣れてきた場合は、軽いジョギングに変更すると、より短い時間で効率的に運動ができます。
運動時間の確保が難しい場合は1日のなかで短い運動を複数回組み込む
仕事や家事の忙しさからまとまった運動時間の確保が難しい場合は、1日のなかで短い運動を複数回組み込む方法が有効とされています。
厚生労働省の資料では、生活の中に運動を取り入れる重要性が示されています。
具体的な1日の中で行える短い運動の例は、以下のとおりです。
- 通勤や買い物で1駅分歩く
- 昼休みなどの長い休憩で社内や会社近辺を歩く
- エレベーターより階段を選ぶ
1回あたりは少ない運動量でも、複数回積み重なった場合は、10分程度のウォーキングに近い運動量にできます。
無理やり運動時間を確保して継続できないよりも、継続できる形で自分なりに運動できたほうが、長期的な習慣化につながります。
高血圧の人は激しい筋力トレで血圧を上げないように意識する

高血圧の人は激しい筋トレを行った場合、一時的に血圧を上昇させる可能性があります。
重い荷物を持ち上げるときや腹圧を一気にかけるときは、一旦息を止めて力を入れた影響で血圧が上昇します。
高血圧の人はさらに血圧を上げる要因になるため、ジムなどで筋トレを行う際は、高重量のウエイトトレーニングを避けてください。
有酸素運動と併せて筋トレを取り入れたい場合は、なるべく呼吸を止めずにリズミカルに行える動作が安全です。
運動前後のストレッチを徹底して筋肉の緊張緩和や負傷の防止に努める
運動前のストレッチは筋肉と関節をほぐし、急激な動作による負傷を防ぐ効果があります。
特に50代以降は筋肉の柔軟性が低下する傾向があり、準備運動を省略すると、肉離れや関節の痛みが生じる場合があります。
基本的には運動時に使う筋肉や関節を動かすため、ウォーキングの場合は腕全体や足首などを軽く回してから始めるとよいでしょう。
運動後のストレッチも、負傷や疲れを防ぐ効果が期待できます。
運動によって緊張した筋肉をゆっくりと伸ばすと、回復を助けるとともに疲労の蓄積を軽減できます。
季節や天候に合わせた適切な服装や行動で身体への過度な負担を回避する
有酸素運動を習慣化する際は、季節や天候に合わせた適切な服装や行動を取って、身体への過度な負担を回避しましょう。
夏の高温多湿の環境や冬の寒冷な屋外は、身体への負担が平時より大きくなる傾向があります。
夏は早朝や夕方の涼しい時間帯を選び、こまめな水分補給を行う対策が求められます。
冬は防寒をしっかり行い、屋外の天候が悪いときは、室内のウォーキングや体操も選択肢に取り入れてください。
天候や体調に合わせて無理のない環境を選ぶ判断が、継続的な取り組みを支えます。
専門家のアドバイスを積極的に取り入れながら運動習慣を確立する

運動習慣を確立するために、医師や管理栄養士、理学療法士といった専門家のアドバイスを積極的に取り入れる姿勢が重要です。
糖尿病や高血糖でない人も、普段の食事内容や服薬状況によって、適切な運動量は異なります。
本格的に毎日継続した運動を始める際は、専門家と相談したうえで、個別に最適化された運動量や運動時間を把握しましょう。
相談後に運動を始める際は、血圧手帳や記録アプリなどを活用して、日々の数値を記録しながら運動量と血圧の関係性を可視化します。
血圧を下げるためには適切な範囲で有酸素運動を継続的に続ける
血圧を下げるための運動は、定期的な有酸素運動が有効であり、個人によって適切な運動量や運動時間が異なっています。
短期間では血圧を下げる効果が期待できないため、毎日無理なく継続できる範囲で有酸素運動を取り入れていきましょう。
ウォーキングは専門的な道具や場所が必要なく、比較的簡単に始められる有酸素運動として有用です。
糖尿病や高血糖などの特定の病気や症状がある人は、激しい運動や投薬状況によって、体調不良が生じる可能性があります。
健康効果を得るために本格的な運動を始める際は、最初に医療機関を受診して、自身の状態や適切な運動量を把握してください。
