内臓脂肪と血圧は内臓に溜まった脂肪細胞が出す物質を通じて関係し、肥満傾向の人では少しの減量でも血圧の数値が改善するとされています。
減塩と減量のどちらから始めるか迷う場合は、どちらか一方に絞らず両方に取り組みましょう。
- 内臓肥満体型では脂肪細胞が出す悪玉の物質がインスリンの働きを弱め高血圧にもつながる
- 健診で高血圧と言われていなくてもメタボリックシンドロームの血圧の項目には当てはまる場合がある
- 食塩の取り過ぎは体に水分を溜め血流量を増やして血圧を上げる
- 肥満傾向の人は今の体重の数パーセントの減量でも血圧の数値に改善が見られる
- メタボリックシンドロームや高血圧のある人には減量と減塩の両方が望ましい
- 食塩を1日1g減らすと上の血圧は約1mmHg強下がると期待できる
- 運動はインスリンの働きを良くして減量も後押しする
参照元:肥満・メタボリックシンドローム診療の新展開 | 国立長寿医療研究センター
内臓脂肪と血圧はどのようなしくみで関係するのか

内臓の周りに溜まった脂肪細胞は善玉と悪玉の両方の物質を出し、内臓肥満体型で多く出る悪玉の物質が、血圧の上昇にも関わるとされています。
内臓肥満体型は、腸管などの周りに脂肪が溜まり、お腹がぽっこりと出る体型です。
| 体型 | 内臓脂肪が多く出すとされる物質 |
|---|---|
| 正常体型 | アディポネクチンなどの善玉の物質 |
| 内臓肥満体型 | TNF-αやIL-6などの悪玉の物質 |
悪玉の物質でインスリンの働きが弱まった状態はインスリン抵抗性と呼ばれ、高血糖のほか脂質異常症や高血圧にもつながって、動脈硬化の危険を高めるといわれています。
内臓脂肪に限らず、太り過ぎそのものも血圧を上げ、心臓に負担をかけるとされます。
健診の結果票が手元にある人は、腹囲と血圧に加えて血糖と脂質の値も、次の節の基準と見比べてください。
参照元:BMIと皮下・内臓脂肪肥満によるメタボリックシンドロームの関連 | J-STAGE
メタボリックシンドロームの診断基準と当てはまる血圧の値

メタボリックシンドロームの血圧の基準は、高血圧と診断される値より低く、上の血圧130mmHg以上か下の血圧85mmHg以上に設定されています。
| 血圧 | メタボリックシンドロームの基準 | 高血圧の診断の基準 |
|---|---|---|
| 上の血圧 | 130mmHg以上 | 140mmHg以上 |
| 下の血圧 | 85mmHg以上 | 90mmHg以上 |
腹囲の基準を満たしたうえで血圧と血糖、脂質のうち2つ以上に当てはまると、メタボリックシンドロームと診断されます。
| 項目 | メタボリックシンドロームの基準 | 診断の条件 |
|---|---|---|
| 腹囲 | 男性85cm以上・女性90cm以上 | 必須 |
| 血圧 | 上の血圧130mmHg以上か下の血圧85mmHg以上 | 血圧・血糖・脂質のうち2つ以上 |
| 空腹時の血糖 | 110mg/dL以上 | 血圧・血糖・脂質のうち2つ以上 |
| 脂質 | 中性脂肪150mg/dL以上かHDLコレステロール40mg/dL未満 | 血圧・血糖・脂質のうち2つ以上 |
当てはまる項目が重なると脳卒中や心臓病を発症するリスクが高くなるとされ、診断の基準を満たす人では心血管疾患を起こすリスクも2型糖尿病になるリスクも、満たさない人の約3倍といわれています。
参照元:メタボって何が悪いの? | 国立長寿医療研究センター
参照元:トップページ | 日本高血圧学会
参照元:肥満・メタボリックシンドローム予防の食事 | e-ヘルスネット 厚生労働省
内臓脂肪のほかに血圧を上げる要因には何があるか

内臓脂肪のほかにも遺伝と毎日の生活習慣が血圧に関わるといわれ、高血圧の大半は原因を特定できない本態性高血圧とされています。
血圧を上げるとされる生活習慣は、次のとおりです。
- 食塩の取り過ぎ
- お酒の飲み過ぎ
- 精神的なストレス
- 運動不足
- 野菜や果物に含まれるカリウムなどの不足
- 喫煙
食塩を取り過ぎると、体はナトリウムの濃度を薄めようとして水分を溜め込み、血流量が増えて血圧が上がるとされます。
腹囲が基準に届いていなくても血圧が高い場合は、毎日の食事で取る食塩の量も振り返ってください。
参照元:食事療法について | 国立循環器病研究センター 病院
肥満傾向で血圧も高めの人が目安にする減量の幅はどれくらいか

肥満傾向の人は、今の体重の3%ほどの緩やかな減量からでも、血圧などの検査値の異常が改善するといわれます。
体重70kgの人であれば、今の体重の3%は約2.1kgです。
| 減量の幅 | 期待される変化 |
|---|---|
| 3か月で今の体重の3%以上 | 血圧・糖や脂質の代謝・動脈硬化の指標の改善 |
| 今の体重の5〜10% | メタボリックシンドロームに伴う高血圧・脂質異常・高血糖の改善と糖尿病の発症の予防 |
今の体重ではなく標準体重を保てるエネルギー量を目安に毎日の食事を取り、体重を少しずつ減らして、減らした後もその体重を維持しましょう。
参照元:肥満・メタボリックシンドローム予防の食事 | e-ヘルスネット 厚生労働省
参照元:肥満・メタボリックシンドローム診療の新展開 | 国立長寿医療研究センター
参照元:食事療法について | 国立循環器病研究センター 病院
メタボリックシンドロームや高血圧のある人は減塩と減量の両方に取り組む

メタボリックシンドロームや高血圧のある人には、肥満の改善と減塩の両方が望ましいとされます。
| 取り組み | 期待される上の血圧の下がり幅 |
|---|---|
| 食塩を1日1g減らす | 約1mmHg強 |
| 体重を約4kg減らす | 4.5mmHg |
1日の食塩の目標量は、健康な人では男女で異なり、高血圧や心疾患のある人では医師から指示されます。
| 対象 | 1日の食塩の目標量 |
|---|---|
| 健康な男性 | 7.5g未満 |
| 健康な女性 | 6.5g未満 |
| 高血圧や心疾患のある人 | 医師から指示された量で一般に6g未満 |
みそ汁などの家庭の味付けを薄味から濃い味までの段階に分けると、好みが一段階濃いごとに毎日取る食塩はおよそ1g多いと報告されています。
いつもの味付けを少し薄くするところから、減塩を始めてみてください。
参照元:日本人の食事摂取基準 2020年版 参考資料 生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連 | 厚生労働省
参照元:食事療法について | 国立循環器病研究センター 病院
参照元:東京近郊のがん検診受診者におけるみそ汁の味付けと塩分摂取量の関係 | 国立がん研究センター がん対策研究所
内臓脂肪と血圧の対策として体を動かす時間を少しずつ増やす

運動は高血圧や脂質異常症の改善に有効なうえ、続けるとインスリンの働きが良くなって減量にもつながるといわれます。
毎日の生活で体を動かす時間を少しずつ増やし、この目安へ近づけましょう。
健診の結果で医療機関の受診を勧められた場合は、運動の強さや食塩の量を医師と相談して決めてください。
