糖尿病は生活習慣病の代表格として知られ、その患者数は増加傾向にあります。
そんな中、近年注目を集めているのがポリフェノールを含む食品です。
しかし、本当に糖尿病の予防に役立つのか、なぜ糖尿病に効果的なのかと疑問に思う人もいるでしょう。
本記事では、ポリフェノール食品が糖尿病に役立つ理由や効果的な取り入れ方などを詳しく解説します。
この記事でわかること
- ポリフェノールを含む食品に期待できる糖尿病への効果
- ポリフェノールが糖尿病に役立つ理由
- ポリフェノールを含む食品を効果的に取り入れる方法
- ポリフェノール食品を取り入れる際のポイント
ポリフェノール食品が糖尿病の予防に役立つのか知りたい人や、食事に取り入れたい人はぜひ参考にしてください。
目次
糖尿病リスクの低下にはポリフェノール食品を取り入れるのが効果的である
野菜や果物などに多く含まれるポリフェノールは、糖尿病のリスクを抱える人や予備軍とされる人が積極的に取り入れたい栄養素の一つです。
ポリフェノールには強力な抗酸化作用と抗炎症作用があり、糖尿病などの生活習慣病の発症リスクを抑えるうえで非常に重要な役割を担っています。
具体的に期待される主な作用は、以下のとおりです。
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- 体脂肪の低減
- 血中コレステロールの改善
- 血糖値のコントロール
- イソフラボンによる骨の健康維持
ポリフェノールとは、植物が紫外線や病原菌などの外的ストレスから自らを守るために作りだす天然の化合物のことです。
私たち人間にとっては苦みや渋み、香りや色素として感じられる成分として知られており、野菜や果物などの多くの植物性食品に含まれています。
コーヒーや大豆製品などポリフェノールを豊富に含む食品を摂取している人は、糖尿病の発症リスクが低い傾向にあるという報告もあります。
ポリフェノールは健康を維持するうえで欠かせない成分の一つですが、私たちの体ではつくれません。
そのため、日々の食事からポリフェノールを含む食品を意識的に取り入れるのが大切です。
参照元:「多目的コホート(JPHCコホート)」における糖尿病・メタボリックシンドロームの発症要因と実態分析に関する研究
自然界に8,000種類以上あるポリフェノールは多様な食品に含まれている
ポリフェノールは自然界に約8,000種類以上も存在するとされており、私たちが日常的に食べている多様な食品に含まれています。
そのため、ポリフェノールは特別な食材を用意しなくても、日々の食事で手軽に取り入れられるのが利点です。
ポリフェノールには多くの種類があり、食品によって含まれる成分や作用が異なります。
代表的な種類と具体的な食品は、以下のとおりです。
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- アントシアニン:ブルーベリー、ブドウ、なす、黒豆など
- タンニン:赤ワイン、コーヒー、紅茶、渋柿など
- カテキン:緑茶、抹茶、大豆、ココアなど
- イソフラボン:大豆、納豆、豆腐、きな粉など
- クロロゲン酸:コーヒー豆、りんご、じゃがいもなど
- カカオポリフェノール:カカオ、チョコレート、ココアなど
- オレウロペイン:オリーブオイルなど
例えば、ブルーベリーやブドウに含まれているアントシアニンは、目の機能を助ける成分として広く知られています。
アントシアニンは目への働きかけだけでなく、血流の改善や動脈硬化など血管に関わる疾患への効果も期待されており、積極的に摂りたいポリフェノールの一つです。
そして緑茶に豊富に含まれるカテキンや、ココアに多いカカオポリフェノールも強い抗酸化作用が注目されています。
これらのポリフェノール食品は加熱調理などの手間が少なく、そのまま食べたり飲んだりできるため、毎日の食生活に手軽に組み合わせて取り入れられるでしょう。
例えば以下のように、1日の食事や間食にポリフェノールの食品を加えてみてください。
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- 朝食:ヨーグルトにブルーベリーを加える
- 昼食:サラダにオリーブオイルをかける
- 間食:ココアを飲む
- 夕食:なすと豆腐の味噌汁を飲む
毎日の食生活に少しずつポリフェノールを含む食品を取り入れると、無理なく摂取できます。
糖尿病の予防に役立つ理由はポリフェノールを含む食品がもつ二つの作用にある
ポリフェノールを含む食品が糖尿病の予防に役立つ主な理由は、強力な抗酸化作用と抗炎症作用があるためです。
私たちはストレスや乱れた食生活などが原因で、知らず知らずのうちに体内で活性酸素や炎症を増加させている可能性があります。
ポリフェノールは活性酸素や慢性炎症を抑える働きが期待されており、結果として糖尿病の発症リスクを低下させると考えられています。
さらに、最近注目を集めているのが、2024年に発表された芝浦工業大学とイタリアのカターニア大学の共同研究による新たな発見です。
この研究では、ポリフェノールの苦味成分が血糖値や食欲を調整するインクレチンというホルモンを刺激する可能性が示唆されています。
インクレチンは小腸で分泌される2種類の消化管ホルモンで、期待できる作用は以下のとおりです。
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- GLP-1:インスリンの分泌促進、血糖値を上昇させるホルモンの抑制、食欲を抑える
- GIP:インスリンの分泌促進、過食の抑制、肥満予防
つまり、ポリフェノールは抗酸化と抗炎症に加えて、消化管に働きかけて血糖コントロールを助ける役割も期待されています。
こうした最新の研究結果からも、ポリフェノールを含む食品の重要性は、今後さらに注目されると予想されます。
GIP は過食・肥満・糖尿病を改善することを解明: レプチン-満腹神経系を活性化する新規インクレチン治療の確立
ポリフェノールの抗酸化作用は活性酸素の働きを抑える効果が期待できる
ポリフェノールがもつ抗酸化作用は、体内で発生する活性酸素の働きを抑える効果が期待できるのが特徴です。
私たちの体内では、呼吸によって取り込まれた酸素の一部が変化して活性酸素と呼ばれる物質が発生します。
そして、活性酸素は以下のような要因によって増加します。
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- ストレス
- 紫外線
- 喫煙
- 偏った食生活
活性酸素は体内に侵入した細菌やウイルスを撃退するなど、免疫機能の一部として必要不可欠な存在ですが、過剰に増えすぎると健康な細胞を攻撃して体内の細胞を酸化させてしまいます。
その結果、血管の老化を進めたりインスリンの働きを妨げたりして、糖尿病やがんなどの生活習慣病の要因となる可能性があります。
抗酸化作用には細胞の酸化ダメージを抑えて、血管や臓器を健やかに保つ働きが期待されています。
このようにポリフェノールの強い抗酸化作用は、活性酸素の過剰な増加を抑えて糖尿病などの予防に役立つと考えられています。
ポリフェノールの抗炎症作用は慢性炎症を緩和する働きが期待できる
ポリフェノールの抗炎症作用には、慢性炎症を緩和する効果が期待できます。
近年の研究で、糖尿病の発症と深く関与していると示唆されているのが慢性炎症です。
例えば、以下のような原因で体内でサイトカインと呼ばれる炎症物質が分泌される場合があります。
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- 過剰な糖質の摂取
- 運動不足
- 内臓脂肪の蓄積
サイトカインは体の中で炎症を引き起こし、インスリンの働きを妨げるインスリン抵抗性を引き起こす一因になると考えられています。
インスリンは、血糖値の安定に重要な役割をもつホルモンです。
しかし、体内の炎症が続いてインスリンがうまく働かなくなると血糖値がコントロールできず、糖尿病のリスクが高まります。
このような体内の炎症を抑える働きをするのが、ポリフェノールの抗炎症作用です。
ポリフェノールの抗炎症作用には、体内の炎症を増やすとされるサイトカインの働きを抑える効果が期待されています。
ポリフェノールは体を酸化から守る抗酸化作用と、炎症を抑える抗炎症作用の二つの働きで、糖尿病のリスク軽減に役立つ存在といえます。
ポリフェノール食品を上手に取り入れるには三つのポイントがある
ポリフェノールを含む食品をより効果的に摂取するために、意識したいポイントは以下の三点です。
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- 毎食に少しずつ取り入れる
- さまざまな種類のポリフェノールを摂取する
- 調理法を工夫する
ポリフェノールの抗酸化作用は、摂取後3~4時間ほどで代謝や排出によって減少してしまうため、一度に大量に摂るよりも毎食こまめに少しずつ取り入れるのが効果的です。
そしてどんな栄養素にもいえますが、特定の食品ばかりに偏ってしまうのは健康上よくありません。
ブルーベリーのアントシアニンや玉ねぎのケルセチンなど、食品によってポリフェノールの種類は異なります。
意識して、さまざまな食品から多種類のポリフェノールを摂取するようにしましょう。
さらに、ポリフェノールの種類によっては熱に弱いものや水に溶ける性質の食品もあります。
ポリフェノールを含む食品を効果的に摂取するには、毎日の食生活の中で無理なく少しずつ続けていくのが大切です。
毎日の食事で少し工夫するだけでも、糖尿病リスクの低減につながります。
ポリフェノール食品はインスリンの感受性を高めて血糖値の安定に役立つ
糖尿病のリスクを抱える人にポリフェノールが推奨される理由は、抗酸化作用や抗炎症作用だけではありません。
近年、以下のようなポリフェノールがもつ血糖値に関わる働きにも注目が集まっています。
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- 血糖値の急上昇を防ぐ
- インスリンの働きを促す
- 糖の吸収を抑制する
これらの働きによって、インスリンの感受性を高めて血糖値を安定化させる効果が期待されています。
糖尿病の予防と進行の抑制において大切なのは、日々の血糖コントロールです。
食後の血糖値が急激に上昇して頻繁に大量のインスリンが分泌されると、すい臓に負担がかかり、インスリン抵抗性の悪化につながる可能性があります。
ポリフェノールは種類によって働きが異なり、さまざまな角度から血糖値の安定に関与するという特徴があります。
代表的なポリフェノールの種類と血糖値の安定に期待される作用は、以下のとおりです。
ポリフェノールの種類 | 多く含む食品 | 期待される作用 |
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カテキン | 緑茶、抹茶、大豆など | 糖の消化酵素を阻害して吸収を遅らせ、食後血糖値の上昇を抑える |
クロロゲン酸 | コーヒー、りんご、じゃがいもなど | 肝臓における糖新生を抑える作用により、血糖値の急上昇を防ぐ |
アントシアニン | ブルーベリー、ぶどう、なすなど | 血圧低下作用や血中の脂質改善作用により、血糖値の低下に貢献する |
ケルセチン | 玉ねぎ、サニーレタス、ブロッコリーなど | 血圧低下や脂質改善による血流の促進が、血糖値の安定に役立つ |
レスベラトロール | 赤ワイン、ぶどうの皮など | 血流を良くする作用によりインスリンの働きを助けて、血糖値の安定につながる |
このように、ポリフェノールは種類によって異なる作用を持ち、血糖コントロールに多方面から役立つ点が魅力です。
日々の食事にポリフェノールを含む食品を上手に取り入れると、血糖値の安定や糖尿病の予防につながります。
ポリフェノールを含む食品は過剰摂取を避けて適量を摂るのが大切である
ポリフェノールを含む食品は、血糖値の急上昇を防ぐ効果が期待できるため、糖尿病を抱える人にとって心強い存在です。
しかし摂り過ぎは体調不良の原因となる可能性があるため、適量を心がけましょう。
ポリフェノールは水溶性であるため、野菜や果物などから自然に摂取する分には過剰摂取の心配は少ないとされています。
そして、ポリフェノールを多く含む食品には赤ワインやコーヒーなどもあります。
これらの食品を摂る場合には、アルコールやカフェインの摂り過ぎにならないよう、適量を意識するのが大切です。
現在のところ、ポリフェノールの1日あたりの摂取基準量は明確には定められていませんが、一般的には1日1,000〜1,500㎎程度を目安にすると良いとされています。
栄養バランスの取れた食事の中で、無理なくポリフェノールを取り入れるのが理想です。
糖尿病予防にはバランスの良い食事とポリフェノール食品の組み合わせが効果的である
この記事では、糖尿病予防においてポリフェノール食品の期待できる効果や、上手な取り入れ方について紹介しました。
糖尿病のリスクを減らすためには、血糖値を安定させる食生活が重要と考えられています。
その中でもポリフェノールを含む食品は、血糖値の急上昇を防ぐ効果が期待できるため、糖尿病の予防に役立ちます。
ポリフェノールはブルーベリーや玉ねぎ、緑茶やコーヒーなどの身近な食品に多く含まれており、手軽に摂取できるのも魅力です。
ポリフェノールを取り入れる際は、過剰摂取を防ぐためにも特定の食品だけを一度にたくさん摂るのは避けましょう。
ポリフェノール食品を意識して取り入れると、糖尿病のリスクを減らすだけでなく健康や美容にも良い影響が期待できます。
日々の食事にポリフェノール食品を積極的に取り入れて、バランスの取れた食生活を心がけましょう。