日々奔走する、
私たちの活動の記録

アカシアジャーナル

ブランディングの視点から見た「アカシアの樹」の魅力 |【対談】エイトブランディングデザイン代表・西澤明洋氏×アカシアの樹代表取締役・片岡武司

アカシアポリフェノール専門メーカー「アカシアの樹」はどのようにして生まれたのか――。
リブランディングを手掛けたエイトブランディングデザインの代表・西澤明洋氏とアカシアの樹代表取締役・片岡武司との対談から、ブランド誕生までの想いとストーリーを振り返ります。

編集:安永真由
撮影:谷本裕志

創業STORY

建材メーカーが見出したアカシアの樹の魅力

西澤

今回は「健康を育む、アカシアの樹」をコンセプトに、「ミモザクス」から「アカシアの樹」へのコーポレートネーミング変更をともなうリブランディングを実施しました。戦略考案、商品政策、商品企画、コンセプト開発、ロゴ、パッケージ、WEBなどを、私たちエイトブランディングデザインがトータルでお手伝いさせていただいています。リブランディングについてお話しする前に、まずは「アカシアの樹」の前身である「ミモザクス」誕生の経緯からお聞きしたいと思います。

 

エイトブランディングデザイン代表 ブランディングデザイナー 西澤 明洋さん
1976年滋賀県生まれ。「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド開発、商品開発、店舗開発など幅広いジャンルでのデザイン活動を行っている。https://www.8brandingdesign.com/

 

片岡

私は「アカシアの樹」のルーツとなる木質建材メーカーに就職し、キャリアをスタートしました。時代としては、地球温暖化などで環境問題が表出しはじめた1990年代。当時私たちは、ニュージーランドに広大な植林地帯を保有し、木を伐採した地に植林をしながら森を再生して、商品を作っていました。これを「輪伐(りんばつ)」と言います。商品化の過程では、膨大な量の木の皮が余るのですが、利用価値があまりなく、それらをどうにか有効活用したいと考えて木の皮の研究をスタートしました。

西澤

ほう、おもしろい展開ですね。

片岡

さらに、オーストラリアの大学と共同で研究することになり、試験を重ねていきました。

西澤

待望の新規事業が走り出したわけですね。

 

お客様の声がダイレクトに届く喜び

西澤

健康食品を扱うことに抵抗はなかったのでしょうか。

片岡

抵抗はありませんでしたが、住宅業界から健康食品業界というのは、まったくの異業種です。しかも、今では考えられませんが、当時の健康食品業界は混沌とした状態で、今のように薬機法、景品表示法、健康増進法などが厳しく整備されているわけではありませんでした。そうした不確かな状況ではありましたが、その一方で、ビジネスモデルとしてはすごくおもしろいと捉えていました。建材メーカーの場合は工務店や問屋、大工さんが取引先のBtoBですが、健康食品の場合はBtoCの商流です。つまり、お客様へダイレクトに商品が届き、会社や商品の名前が伝わるんですよね。

西澤

BtoBモデルから、新しい展開ですね。

片岡

そのとおりです。まったくの新規参入だったので業界については詳しくありませんでしたが、安全や信頼のための試験にはしっかりとお金をかけたので、エビデンスの量は他社と比べて圧倒的でした。販売をスタートしてしばらくすると、お客さまからの反応が届き始めました。こうした声を聞くことは幸せなことです。西澤さんも、お仕事のなかでそう感じませんか。

西澤

ありがたいことですよね。

片岡

私たちも、うれしかったですね。「ありがとう」「助かったよ」といった声や手紙が増えるにつれ、「本当に良い商品なんだから、正々堂々と売っていこう」「アカシアそのものの認知度をもっと上げたい」と、強く認識するようになりました。と言っても、これもほんの数年前の話です。昔に比べたら認知度は上がってきていましたが、一方できちんとしたブランド確立のためのブランディングが必要になってきたというわけです。

 

 

ブランディングSTORY

 

テキストブランドは「人」商品名と会社名に込める想い

西澤

ブランディングの依頼を受けた当時、ミモザクス(現「アカシアの樹」)のことは知りませんでしたが、建材の事業から生まれた展開がおもしろいと感じました。特に、木材を調達する山を自分たちで保有されているとは驚きましたね。樹木についての知見があり、事業としても筋道がしっかりと通っている。なにより、「これは世の中のたくさんのお客様に伝えるべきことだ」と感じて、ぜひともリブランディングをお手伝いさせてもらいたいと思いました。

片岡

健康食品業界には、そもそもブランディングの概念がありませんでした。店舗と媒体広告のみが勝負の世界でしたから、会社名や商品名は誰も気にしていなかったのです。お客様も、購入する時は広告媒体のキャッチコピーに注目がいき、パッケージでは選びません。しかし、ある程度の規模になると、会社名や商品名を認知していただかないと、それ以上事業が広がらないという限界点に達します。私たちもまさしく、その壁に直面したところだったのです。

 

 

西澤

そうだったのですね。私たちは、必ずしもすべての依頼をお受けしているわけではありません。販促だけでもお手伝いはできるのですが、それは本質的な仕事ではないと思うからです。ブランディングを始める際に、私たちはまず、商品のポテンシャルを確認します。商品に力がなければ、当然ですがブランドにはなりえません。でも、実はそれよりももっと大事なのは「人」なんです。ブランドの魅力を伝えるのは結局「人」なので、ブランディングも「人」が重要。私たちは商品と人の魅力をていねいに紐解くことに時間をかけ、何度もワークショップを重ねます。

片岡

なるほど。

西澤

ワークショップでは、社内のさまざまな立場の人にヒアリングし、意見交換を行います。「会社の本当の強みは何なのか」「自分たちのやりたいことは何か」などをみんなで一緒に考えるスタイルです。社内で出た考えや見方の違いをまとめる作業も、意図的に組み込んでいます。そうしてみんなの考えのちょっとした進化や変化を取りまとめながら、ワークショップを進めます。

片岡

私たちのワークショップはいかがでしたか。

西澤

アットホームで風通しが良く、いい人が多かったですね。会社としてのビジョンが大きく、飛躍のためのリブランディングと位置付けられている点もすばらしいと感じました。みなさんがおもしろそうに取り組んでいる姿が良かったですね。

 

 

片岡

通販業界では、セオリー通りに広告を利用することで、100億円くらいの売上には一気に到達できるんです。運もありますが、商品そのものには関係なく、売上を伸ばすことはできるのです。でも、私たちはメーカーですから、商品が命です。いい商品がないと、企業は長続きしません。だから、きちんとブランディングをして、会社のDNAをしっかりと作っておきたかったのです。「売ればいい」という考えだと、私たちの顔つきも会社の雰囲気も変わってしまうと思います。

西澤

ええ、おっしゃるとおりですね。

片岡

とにかく、足腰を強くしなきゃいけない。その柱は「人」である。そして、会社の考え方を表すのは商品であり、名前なんですよね。

西澤

本当にそのとおりです。

 

ネーミングは種明かし  デザインテーマは「品の良さ」

西澤

「ミモザクス」という以前の名前を聞いたときは、「健康食品らしい名前だな」と思いました。けれど、その名前はものづくりの背景とねじれている気がしたんです。商品の魅力を言いきれていないというか、もったいないというか。そこをきちんと表現したいと考えました。そうは言っても、ぼくたちが提案したのは課題だけです。「アカシアの樹」は、片岡社長も含め、ワークショップに参加してくださった全員で案を出して作りあげたブランドですから。

片岡

私たちらしい、本質的な名前になったと思っています。

西澤

リブランディングの過程で他にも名前の候補が挙がりましたが、結局はダイレクトなものが残りましたね。

片岡

アカシアポリフェノールを分かりやすく表現した「アカポリ」など、たくさんの候補が挙がっていましたね。

西澤

「アカシアの樹」――この名前は本物しか名乗れない名前です。ブランディングは伝言ゲームのようなものです。もともとあったモノや会社の魅力が、人から人へとうまく伝言されていくのがねらいで、私たちはその過程でブランドの本質がきちんと伝わるように考えます。役目としては、正しくない位置にあるピースを正しい場所に整えるお手伝い、いわば「整体」みたいなものですね。バシっと背筋を整えて、きちんと洋服を着せる作業です。絶対にしたくなかったのは「これ効きます」という効果を盛っていくような、一方的なブランディングです。

片岡

デザインのイメージはあったのですか。

西澤

そばに置いていて気持ちのいい商品にしたかったので、要素として「品の良さ」がほしいと考えました。

片岡

「品」はいいキーワードですね。

西澤

「売る」と「品の良さ」のせめぎ合いもあると思いましたが、私たちはコミュニケーションのプロとして、またユーザーとして、欲しいと思えるデザインを考えました。ロゴデザインには、アカシアの樹を構成する枝を元気な人のイメージで表現し、アカシアポリフェノールで人々の元気を支える、という想いを込めています。いいデザインになりました。

片岡

そう言えば、最初の打ち合わせで西澤さんが「アカシアの樹」とおっしゃっていたのを鮮明に覚えていますよ。当初はもう少し別のネーミングをイメージしていたから、みんなで「アカシアの樹……うーん、ケーキ屋か?」とか、笑いながら話していましたよね(笑)。

西澤

はは! 「ケーキ屋か?」の会話は私も記憶にありますね(笑)。その後のワークショップでたくさんのネーミング案をご提案させてもらいました。名前に悔いは残したくないので。

片岡

そうでした。それで、最終的には「アカシアの樹」に決まったわけですから、「自分たちのことはわからない」とは、こういうことなのかもしれません。

西澤

そうですね。誰かが誘導したわけではありませんが、自然と「アカシアの樹」に決まりましたね。落ち着くべきところに落ち着きました。

 

 

 

未来のSTORY

 

名前に恥じないプライドで吹き飛ばされない組織に

西澤

リブランディング後、社内外の変化はありましたか。 

片岡

社内全体にやさしい雰囲気が出てきましたね。一体感も出てきました。「この名前に恥じない商品をつくろう」「ちゃんとした広告を出そう」という、ピシッとした空気も感じます。言葉では言わないけど、みんな頭ではわかっているから、同じ方向を向くことで連帯感が出てきたのでしょう。社員の顔つきもおだやかになりました。この先、どこかのフェーズで厳しさも経験するのでしょうが、大変な時期を乗り越えればまた、会社はぐんと伸びていくと信じています。

西澤

ここからの拡大期が、組織としてはいちばん大変かもしれませんね。

片岡

会社が大きくなるためには、やはり「人」ですよね。ロゴにも「人」のモチーフが入っています。

西澤

飲んで健康になり、関わった人も健康になれる。そういうことだと思っています。

片岡

ロゴやコンセプトにもあるように、さらにいい会社になっていくと信じています。規模だけではなく、明るく和やかな雰囲気の「人」が集まる会社にしたいですね。

西澤

片岡社長、これからの目標やビジョンは?

片岡

商品構成から考えると、3つくらい柱があればいいのかなと思っています。働く人が安定も安心もできる企業規模は、この業界だと100億円が一つの目安だと思います。しかし数字を追うのではなく、目的や価値観を共有する人、大切な商品を育てれば結果はついてくると考えています。逆境にあっても吹き飛ばされない、揺らがない。そんな組織や人を育てたいですね。

西澤

すてきなビジョンですね。「吹き飛ばされない」という表現は、木を育てるかのようで示唆的だと感じました。片岡社長は、ブランドや会社に対して木が根を張るような、大樹を育てるイメージを持たれている。そのほうが大事だと私も思っているので、伴走しがいがあります。「アカシアの樹」というブランドを、これからどう育てるか。ともにイメージを膨らませながら、木の年輪が増えていくように、商品や組織を大きくするお手伝いができたらと思っています。

片岡

それは心強い。ありがとうございます。