塩辛・甘辛が好みの人はぜひ実践したい!「塩分を排出する栄養素」

1. 塩分の摂り過ぎが心配な日本人の食生活

栄養バランスがよく、動物性の脂肪も控えめでヘルシーと世界的にも評価されている日本人の食生活。ただし、唯一の問題点といわれているのが、塩分の摂り過ぎにおちいりやすいことです。

 

1-1. 日本人はどれくらいの塩分を摂っている? 

健康な人の場合、1日の塩分摂取量の目安は成人男性が7.5g未満、成人女性は6.5g未満とされています。小さじ1杯の塩が約6gですから、それよりも少し多い程度です。では、実際に日本人がどれくらいの塩分を摂っているかというと、令和元年の報告では成人男性が10.9g、成人女性は9.3g。日本人は確かに塩分の摂り過ぎなのです。また、男女ともに20代・30代より50代以降の人の方が、より多くの塩分を摂っていることも指摘されています。

 

1-2. 塩分の摂り過ぎを招く食習慣とは

日本人が毎日の食事で塩分をつい摂り過ぎてしまうのはなぜなのか。それには次のような理由が考えられます。

1-2-1. しょう油や味噌など、塩分が多い調味料をよく使う

日本人の主食である白米のご飯の塩分量は0g。ただし、ご飯によく合うおかずには塩辛いもの、甘辛いものが多く、その味つけには塩分を含んだしょう油や味噌がひんぱんに使われます。特にしょう油は調理の際に味をととのえるだけでなく、焼き魚、寿司、刺し身、豆腐などに直接かけたり、つけて食べることから、塩分の摂り過ぎを招きやすいのです。また、しょう油ほどではないものの、ソース、ケチャップ、マヨネーズなど、洋食でよく使われる調味料にも塩分が含まれているので要注意です。

1-2-2. 干もの、漬けものなどの保存食や加工食品を食べることが多い

梅干し、野菜の漬物、魚の干ものなど、日本人にとってはおなじみの保存食にも、やはり塩分が多く含まれています。特に雪の多い地域では、冬の保存食として塩漬けにした食品を多く食べる習慣があります。県別の塩分摂取量ランキングを見ても、青森県、山形県、秋田県、長野県、新潟県などが上位にあります。そのほか、一般的によく食べられるちくわ、かまぼこ、はんぺんなど魚肉の練りものや、ハム、ベーコン、ソーセージといった加工食品にも塩分が含まれています。

1-2-3. 外食をしたり、市販の弁当・総菜を食べることが多い

中華料理、ラーメン、うどん、そばなど外食メニューには濃い味つけのものが多く、しかもどのくらいの量の塩分が使われているのか、よくわからないのも気になる点です。コンビニやスーパーで売られている弁当、おにぎり、総菜を日常的に食べる人も多くいますが、これらも栄養成分表示を見ると塩分が意外に多いことがわかります。

 

2. 塩分の摂り過ぎが体に引き起こす困ったこととは

塩分の摂り過ぎをあらためないままだと、体のあちこちにさまざまな影響が現れることに。健康診断や人間ドックで以下のような問題を指摘されることにもなりかねません。

 

2-1. 血圧のコントロールが乱れる

私たちが食事で摂る塩分とは、ナトリウムと塩素が結合した塩化ナトリウムのこと。食塩の約40%がナトリウムに相当します。塩分を摂り過ぎて、このナトリウムの血液中の濃度が高まると、血圧のコントロールが難しくなることが多々あります。ナトリウムには水分を引き込む作用があり、それによって血流量が増すと、血管を圧迫する力、すなわち血圧が乱れがちになるのです。基準を超えた圧力にさらされ続けると、血管壁の老化が早まるため、不測の事態におちいるケースも十分に考えられます。

 

2-2. 足などにむくみが現れる

増えすぎたナトリウムによって血圧が変動しても、自覚症状としては現れにくいものですが、体のむくみがしばしば目立つようになるといわれています。ナトリウムが引き込んだ水分が、毛細血管から細胞の間に流れ出ると、特に体の下部にある足首や足の甲などがむくみやすくなるのです。

 

2-3. 腎臓の機能に影響を与える

増えすぎたナトリウムによって血圧の乱れが続いて、血管壁へのダメージが蓄積されると、毛細血管の働きがとりわけ心配になります。臓器の中でも毛細血管が密集しているのが、体内の老廃物をろ過して尿として排出する腎臓です。そのため、塩分の摂り過ぎが長く続いている人は、腎臓の機能に負担がかかっていないかをチェックする必要があるといえます。

 

2-4. 胃のコンディションが崩れる

胃の中の塩分濃度が高まると、胃壁の粘膜をおおっている粘液の防御力に影響を与えてしまうといわれています。食べものを消化する胃酸から胃壁をガードするには、この粘液の働きがとても大切なのですが、塩分の摂り過ぎによってそのコンディションが崩れるケースがあるのです。

 

3. 体から塩分を排出し、血圧を整えるために役立つ3大ミネラル

塩分の摂り過ぎを解消するには、調味料を減らすなど食事全体を薄味にすることが大切といわれます。ただ、薄味に慣れるまでに時間がかかったり、どうしてももの足りなさが気になる人もいるかもしれません。そこでおすすめしたいのが、摂り過ぎた塩分を体からスムーズに排出するとともに、塩分による血管への影響をやわらげること。そのために努めて摂取したいのが以下の3つのミネラルです。

 

3-1. カリウム

塩分に多く含まれるナトリウムを排出するために、最も頼れるミネラルがカリウムです。体内でカリウムは細胞内、ナトリウムは細胞外の水分量を調節しています。すなわち、カリウムはナトリウムと拮抗して働く存在であり、ナトリウムの余分な吸収を防いで、尿から体外に排出されるように促すのです。そうなればおのずと、ナトリウムの摂り過ぎによる血流量の増加が正されて、血圧への影響が整えられるわけです。そのほか、カリウムは神経刺激の伝達や筋肉の収縮にも関わるなど、生命維持のために必須の働きをしています。

 

3-2. カルシウム

骨や歯の材料になるとして知られるカルシウムですが、実は血圧をコントロールするためにも積極的に摂りたいミネラルです。というのも、カルシウム不足におちいると血管が収縮して狭くなり、そのために血圧が変動するといわれているからです。そうなれば、ナトリウムによる血圧への関与がさらに大きくなりかねません。塩分を摂り過ぎる傾向にある人ほど、カルシウムが不足しないように気を配る必要があるといえます。

 

3-3. マグネシウム

カルシウムで血管の過剰な収縮をケアするとともに、合わせて摂りたいのがマグネシウムです。マグネシウムは血管を拡張させて血液の流れに関係するほか、血管内にできる血栓(血液の塊)を調整するようにも働きます。これらの作用はいずれも、ナトリウムによる血圧の変動をコントロールするために役立ちます。

 

4. 塩分が気になる人におすすめ!3大栄養素はこうして摂取する

塩分の摂り過ぎが気になる人に、しっかり摂取していただきたいカリウム・カルシウム・マグネシウム。これら3大ミネラルは幅広い食品に含まれており、お好みのものを毎日のメニューに加えることがすすめられます。

 

4-1. カリウムの摂り方のコツと豊富に含む食品

カリウムの特徴は水溶性で、熱に弱いということ。そのため、野菜サラダなどなるべく生の状態で食べると効率的に摂取できます。煮込み料理にした場合は、煮汁も余さずいただくようにしましょう。もちろん、味つけは塩を抑えて薄味にするのがベターです。なお、カリウムは発汗によって失われる量も多いため、汗をかく季節は意識的に摂ることも大切です。

 

カリウムが豊富な食品(カッコ内は1食の目安量)

サトイモ(2個80g) 512mg

ヤマイモ(80g) 472mg

ホウレン草(100g) 690mg

ブロッコリー(100g)460mg

トマト(100g) 210mg

バナナ(1本 100g) 360mg

メロン(100g) 350mg

 

4-2. カルシウムの摂り方のコツと豊富に含む食品

カルシウムの体内での吸収率は食品によって異なり、牛乳で約40%、小魚で約30%、野菜で約20%といわれています。さらに効率よく摂るには、カルシウムの吸収を促すマグネシウムやビタミンDと一緒に摂ることがおすすめ。ビタミンDが豊富な食品には、イワシ、サンマ、サケなどの魚類やシイタケ、キクラゲなどのキノコ類があげられます。

 

カルシウムが豊富な食品(カッコ内は1食の目安量)

牛乳(1杯200g) 220mg

ヨーグルト(100g) 120mg

干しエビ(10g) 710mg

イワシ丸干し(1尾30g) 132mg

生揚げ(1枚120g) 288mg

小松菜(95g) 162mg

チンゲン菜(100g) 100mg

 

4-3. マグネシウムの摂り方のコツと豊富に含む食品

マグネシウムは穀類、豆類、海藻などに多く含まれています。上記のとおり、カルシウムが豊富な食品と一緒に摂ると、その吸収を助けるほか、カルシウムとともに骨を作る・心臓の拍動に関わるなどセットになって体内で働きます。なお、ゴマはそのままでは体内で消化しづらいため、すりゴマか切りゴマにして食べることがすすめられます。

 

マグネシウムが豊富な食品(カッコ内は1食の目安量)

ゆでそば(200g) 54mg

玄米ご飯(100g) 49mg

あおさ(2g) 64mg

干しヒジキ(10g) 62mg

納豆(45g) 45mg

木綿豆腐(100g) 57mg

ゴマ(ティースプーン1杯) 11mg

 

5.まとめ

しょう油をかけたり、味噌汁を飲んだり、外食をすると摂取量がぐんと増えてしまう塩分。摂り過ぎが気になるけれど、減塩は手間ひまがかかるし、薄味に慣れるかどうか……そんな人はカリウム、カルシウム、マグネシウムの3大ミネラルを積極的に摂ること。血圧のコントロールを支える食事の知恵として、ぜひ実践してみてください。